タイ北部マエモー炭鉱産タニシ類化石の炭素・酸素同位体に記録された古生物地理と古気候の変化
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概要
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タイ北部のマエモー炭鉱のR-, Q-, K-石炭帯から産出したタニシ類化石の炭素13・酸素18 の同位体分析を秋田大学で行った.その結果,下部層の方が重い炭素同位体比を示した.R-石炭帯の炭素同位体は3.52-6.92 ‰PDB で,Q-石炭帯では4.17-5.77 ‰,K-石炭帯では1.41-1.34 ‰PDB値を示した.酸素同位体比は下部層が上部層より重い値を示し,R 帯で-3.15~-5.10 ‰,Q帯で-4.19~-6.04 ‰,さらにK帯では-7.05~-8.04 ‰の範囲を示した.これらのランパン地域のケウロム鉱床のタニシ類化石の同位体は炭素δ13C 値で-11.01~-12.19 ‰,δ18O 値では6.64~7.04 ‰の範囲を示した.これらの結果,マエモー堆積盆では,R帯からQ帯,そしてK帯へと徐々に同位体が変化しており,さらに現在のタニシ類の同位体比とは明らかに異なる値である.このR 帯の重い炭素同位体比は,Q帯やK帯の堆積時より,より冷温であったことを示し,さらに当時の古地理は海に近い環境であったと考えられる.さらにQ帯とK帯の堆積時は,R帯と比べて温暖化し,さらに地理的に高緯度化したか高度を増したことが考えられる.これらのマエモー炭鉱での古気候変化は,タイ北部の他の漸新統から下部中新統にかけての環境変化と同調的である.さらに,より温暖な熱帯への気候変化はK帯とQ帯の古地磁気層序年代から指示される中期中新世に生じている.これらの古環境変化の原因は,オーストラリア-インドプレートの北上に伴うユーラシアプレートとの衝突によって生じたものであると考えられる.
著者
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Ratanasthien Benjavun
Department Of Geological Sciences Faculty Of Science Chiang Mai University
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Takashima Isao
Center for Geo-Environmental Science, Faculty of Engineering and Resource Science, Akita University
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高嶋 勲
Center for Geo-Environmental Science, Faculty of Engineering and Resource Science, Akita University
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松葉谷 治
Center for Geo-Environmental Science, Faculty of Engineering and Resource Science, Akita University
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