限外ろ過法によるUO22+-フミン酸錯体形成の評価:分子量・構造不均質性の効果
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概要
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フミン酸(HA)は不均質な天然有機物質の一種であり, その錯体形成は複雑なものとなる.本研究では, HAと放射性廃棄物処分等で問題となるUO22+の錯体形成に関して, HA中の複数の錯体形成サイトの存在に着目して評価を行った.HAは幅広い分子量分布を有しており, また, その構造が分子量によって異なることが報告されていることから, このような不均質性の寄与に関する知見を得るために, Gel Permeation Chromatography (GPC) によって得られた分子量の異なるHAフラクションとUO22+の錯体形成量を限外ろ過法によって評価し, 得られた結果と蛍光クエンチング実験の結果との比較を行った.未分画のHAに関して得られた錯体形成の安定度定数は6.25であり, 既往の研究で得られた値(6.13~6.75)と同様であることがわかった.一方, HAフラクションとUO22+の錯体形成では, 安定度定数において, フラクション間の相違がほとんどないのに対して, 錯体形成に寄与するサイトの割合は低分子量のフラクションにおいて大きく, フラクションの構造の違いが錯体形成量に変化を及ぼしていることが示唆された.また, クエンチング実験の結果との比較から, HAの蛍光に関与しない錯体形成サイトがすべてのフラクションに含まれており, このようなサイトが安定度定数において, UO22+と間でより安定な錯体を形成するサイトに対応していることが明らかになった.
- 一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会の論文
著者
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斉藤 拓巳
Department of Quantum Engineering and Systems Science, Graduate school of Engineering, The University of Tokyo
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長崎 晋也
Institute of Environmental Studies, Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo
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田中 知
Department of Quantum Engineering and Systems Science, Graduate school of Engineering, The University of Tokyo