ICR系マウスにおける自然発生性網膜機能異常のタイプ及びその発生頻度に関する検討
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概要
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網膜毒性は失明の恐れから重大な毒性の一つと考えられており、網膜電図(ERG)検査は網膜毒性を検出するための有効な手段である。一方、ICR系マウスは薬物の前臨床安全性評価に汎用されるクローズドコロニーマウスである。実験に使用する実験動物の特性を把握することは、精度の高い安全性評価を行う上で重要であるが、ICR系マウスにおいて、どのような網膜機能異常がどの程度の頻度で存在するのか、その詳細は不明である。そこで、本検討ではCrlj:CD1(ICR)マウス(計154匹)について、ERG検査を行い、自然発生性網膜機能異常のタイプ及び頻度を調べた。12時間以上の暗順応後、麻酔下で暗順応ERGを記録し、続いて10分間の明順応後に明順応ERGを記録した。網膜機能異常のみられた動物は、検眼鏡的検査を実施し、一部の動物は交配実験及び眼球の病理組織学的検査に供した。ERG検査では、明順応ERGが記録されない錐体系機能異常が8.4%、暗順応及び明順応ERGが記録されない杆・錐体系機能異常が0.6%認められた。これらの動物の眼底及び網膜の組織像にERGの異常を反映する所見はみられなかった。各タイプの網膜機能異常を示す雌1匹を、ICR由来の杆・錐体系機能異常モデルであるICR-derived retinal dysfunction (IRD)1マウスの雄と交配させたところ、F<SUB>1</SUB>マウスはいずれも母動物と同じ表現型を示したことから、これら網膜機能異常が遺伝性である可能性が示唆された。以上より、Crlj:CD1(ICR)マウスにおいて網膜形態の異常を伴わない自然発生性の網膜機能異常を有する動物が潜在することが示された。本マウスを網膜機能評価に用いる際には使用前のERG検査による選別が有益であると思われた。
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