食品安全性に関する知識が消費者の態度に与える影響:-BSE問題の共分散構造分析-
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概要
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本稿の課題は,アンケート調査から収集したデータを用いて,消費者のBSEや食品安全性に関する潜在知識と,国産牛肉に対する潜在態度の関連構造を共分散構造分析により明らかにすることである.分析のために多重指標モデルを構築するとともに,データの非正規性に対応して,ブートストラップ法を用いてモデルの信頼性を確認した.多重指標モデルによる分析から,以下の点が示された.(1) 誤った知識も含んだ「BSEは危険」という総体的知識が「国産安全性への信頼」,「安全性への慎重な態度」といったやや極端な態度の形成に寄与している,(2) 「食品の危険性」知識が豊富であれば,「国産安全性への信頼」,「他者同調」,「マスコミ信頼」の3つの態度が弱まる,(3) 「BSE対策」に関する知識を持っているほど「国産安全性への信頼」,「他者同調」が強くなる.したがって,食品安全性に関する情報を積極的に収集・検討している消費者ほど,無条件に国産を高く評価するという「国産安全性への信頼」が低くなる.一方でBSE対策についての知識は,国産安全性への信頼回復に寄与していることが確認された.しかし,食品リスクに対する消費者の過剰な反応を抑制し,費用対効果も含めた適切な対策について議論できるような状況を作るには,誤った情報を正すとともに,リスクの内容とその大きさについて,適切な情報を提供することが前提条件となるだろう.
著者
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澤田 学
Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine
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吉川 肇子
Keio University
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合崎 英男
National Institute for Rural Engineering
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佐藤 和夫
Rakuno Gakuen University