経鼻内視鏡におけるレモン果汁を用いた新しい蠕動抑制法の検討
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概要
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目的:上部内視鏡検査において胃蠕動は検査精度を劣化させる要因であり,何らかの蠕動抑制処置を講じることが一般的である.筆者はレモン果汁を用いた新しい蠕動抑制法を開発した.経鼻内視鏡における本法の有効性と安全性を証明するためランダム化比較試験を行った.方法:2011年6月~8月に当院において人間ドックおよび検診で経鼻内視鏡を受けた80名を対象とし,封筒法によりA群とB群にランダムに割付けた.A群は検査中にレモン果汁15mLを十二指腸に注入し,B群はレモン果汁の代わりに蒸留水15mLを注入した.蠕動の程度を1(蠕動なし)~4(強い蠕動)の4段階にスコア化し,注入前後の蠕動の程度を評価した.同時に注入前・直後・注入3分後の血圧,心拍数およびSpO2を測定した.結果:蠕動なしの割合はA群注入前7.9%,注入後39.5%,B群注入前8.3%,注入後0%であり,注入後の群間比較においてA群が有意に高かった(p<0.00001).蠕動スコアの平均値はA群注入前2.34,A群注入後1.79,B群注入前2.47,B群注入後2.64であり,A群では注入後に有意に減少した(p<0.01).群間比較では注入前は両群に有意差はなく,注入後はA群が有意に低かった(p<0.0001).結論:経鼻内視鏡において本法が有効で安全な蠕動抑制法であることが証明された.本法は苦痛を伴わず経済性にも優れており人間ドックや検診に適している.今後,本法が普及し経鼻内視鏡の検査精度の向上に貢献することが期待される.