複数の基礎心疾患により3弁の感染を認めた感染性心内膜炎の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
症例は58歳, 男性. 右小脳梗塞と発熱にて入院中, 心不全症状を認めるようになった. 心臓超音波検査を施行したところ, Kirklin I型心室中隔欠損(muscular ventricular septal defect; VSD), 2次孔欠損型心房中隔欠損(atrial septal defect; ASD), 大動脈弁右冠尖逸脱による大動脈弁逆流, 僧帽弁後尖逸脱による僧帽弁逆流に加え, 大動脈弁の弁尖, 僧帽弁弁輪部, および肺動脈弁の弁尖に疣腫を認め, 感染性心内膜炎と診断した. 感染が3弁に波及し, ASD, VSDや複数の弁の逆流によりNYHA IV度の心不全を認め, 可及的な外科手術が必要と判断した. しかし, 発症後, 早期の脳梗塞を認めていた. まずは内科的治療による心不全と感染のコントロールを行い, 第28病日に大動脈弁置換, 僧帽弁置換, 右室流出路形成, 三尖弁輪形成, 心室中隔, および心房中隔閉鎖術を施行した.<BR>感染性心内膜炎は通常1つの弁に感染巣を形成することが多く, 3弁もしくは4弁にまで感染が広がることは稀とされている. 複数の弁に感染が広がる場合は, 心内シャントを有する先天性心疾患患者に多く, 成人の心室中隔欠損症患者の例も報告されている. 本症例では, Kirklin I型心室中隔欠損のみならず, 大動脈弁右冠尖逸脱による大動脈弁逆流, 僧帽弁後尖逸脱による僧帽弁逆流など複数の基礎心疾患が関与し, 感染が拡大したと考えられた. すべての弁に対する外科手術が必要であったが, 術前の内科的治療により心不全と感染が十分コントロールされていたため, 良好な経過をたどることができた.
著者
-
市堀 泰裕
国家公務員共済組合連合会大手前病院 皮膚科
-
佐藤 芙美
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
-
新谷 英夫
国家公務員共済組合連合会大手前病院心臓血管外科
-
市堀 泰裕
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
-
初岡 慎一
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
-
奥原 祥貴
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
-
柴本 将人
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
-
吉田 聡
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
-
山田 貴之
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
-
新谷 英夫
国家公務員共済組合連合会大手前病院循環器科
関連論文
- 46.Pleomorphic carcinomaの1例(第83回 日本肺癌学会関西支部会,関西支部,支部活動)
- 三井記念病院(循環器病専門施設見学)
- 複数の基礎心疾患により3弁の感染を認めた感染性心内膜炎の1例
- 破裂性腹部大動脈瘤手術症例の検討 : 治療成績およびDPC導入に伴う医療経済面からみた問題点