大脳辺縁系のゴナドトロピン分泌抑制機序に関する電気生理学的研究
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概要
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人工照明下 (明 : 5 : 00~19 : 00;暗 : 19 : 00~5 : 00) で飼育した成熟ウィスター系ラットを用い, 脳内諸部位に急性及び慢性的に電極を植込み, 正常性周期の発情前期及び去勢ラットにつき, 多ニューロン発射活動を記録することにより実験を行なつた.但し, 急性実験では, 実験当日朝9 : 30~10 : 00の間にウレタン (120mg/kg, 腹腔投与) にて麻酔し, 局所の刺激及び記録は4時間ないし4時間半後より開始した.以下の結果を得た.1.発情前期ラットで, 扁桃核外側核, 扁桃核前部, 海馬, 前海馬, 中脳部中心灰白質腹外側部の電気刺激 (100Hz, 0.5msec, 1-2V, 30sec) は, 内側視索前野及び視床下部弓状核の多ニューロン発射活動を殆んどの例で低下させた.ホルモン処置を施さない去勢ラットで同様の実験では, 発情前期ラットと同様に, 内側視索前野及び視床下部弓状核の多ニューロン発射活動を抑制したが, 変化した実験例数の占める割合は, 発情前ラットが約80%に対して約50%と少なく, むしろ明らかな促進効果を認めた例も存在した.2.上記単独部位の刺激で内側視索前野及び視床下部弓状核の電気的活動を抑制する部位を2か所同時に刺激すると, 扁桃核外側核, 海馬, 中心灰白質でのいずれの組合わせによつても, 内側視索前野及び視床下部弓状核の多ニューロン発射活動に著変が認められなくなつた.この事実から, 大脳辺縁系刺激のそれぞれの効果は, 内側視索前野及び視床下部弓状核に至る神経回路において相殺されることが推測された.3.扁桃核外側核と海馬或は扁桃核内側核との間の, 刺激と電気的活動には相反関係があり, 一方の電気刺激により他方の電気的活動が抑制される事実が認められた.4.去勢ラットにエストロゲン処置 (20μg皮下投与) を施すと, エストロゲン投与前に扁桃核外側核又は海馬刺激で, 内側視索前野及び視床下部弓状核の多ニューロン発射活動が上昇した例でも, 投与後に逆に低下することが認められた.すなわち, 扁桃核外側核或は海馬刺激による内側視索前野及び視床下部弓状核の電気的活動に対する抑制効果が, エストロゲン投与により増強することが認められた.5.コリン作働性効果遮断薬であるアトロピン投与 (70mg/100gm皮下投与) により, 扁桃核外側核刺激の内側視索前野及び視床下部弓状核の多ニューロン発射活動に及ぼす効果は, 投与前後において変化は認められず, 共に抑制した.しかし, 海馬刺激は投与前には抑制したものが, 投与後では逆に促進が認められた.以上, 扁桃核外側核, 海馬, 中心灰白質は, それぞれ異なつた働き方で内側視索前野及び視床下部弓状核の電気的活動を抑制することにより, ゴナドトロピン分泌調節に大きく関与していることが推測された.
著者
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