22.フェノール樹脂の分析法の検討
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概要
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1.従来フェノール樹脂の分析には主として赤外線吸収スペクトルが用いられてきたが, これは原料フェノールが複数のとき, 変性樹脂であると, あるいはフィラーを含む硬化物であるときにはスペクトルの解析が困難である。また最近試みられている熱分解生成物をガスクロマトグラフにかけて分析する方法 (以下熱分解法と略する) は硬化物の分析にも有用であるが, 原料フェノールの種類が多いときには熱分解生成物中のフェノールと混同して解析が難かしい。<BR>ところが堀内氏が見出した方法1) (以下酸分解法と略する) は, フェノール樹脂の成分フェノールを遊離状態に導いてガスクロマトグラフにかけて検出する方法なので, 得られた結果は極めて明快である。すなわち, ノボラックを不揮発性強酸 (例えば <I>-</I>トルエンスルホン酸) とともに加熱還流するとメチレン橋の分解再結合が行なわれる。このとき過剰のフェノールが存在すればノボラックの分子量は次第に低下し, 同時に樹脂の成分フェノールと加えたフェノールとの交換が行なわれ, 遂にノボラックの成分フェノールが遊離状態に導かれる。この遊離フェノールを水蒸気蒸留によって反応系より分離し, ガスクロマトグラフで分柝すれば樹脂の成分フェノールを検出できる。堀内氏はフェノール, O-クレゾール, <I>P</I>-クレゾールの各ノボラックの等量混合物をヘキサで加熱したもの, フェノール, O-クレゾール, <I>P</I>-クレゾールの各レゾールの等量混合物を加熱したものにこの方法を適用し, この方法が硬化物の分析にも有効であることを確かめた。<BR>2.われわれは3官能性, あるいは3官能性が高いフェノール, 混合クレゾール, 3.5-キシレノールを原料とする各レゾールを十分に硬化させ, まず堀内氏が採り上げている交換反応剤フェノール, m-クレゾール, <I>P</I>-クロルフェノールと, 新たに3.5-キシレノールを用いて, これらの硬化物に本法を適用し, 本法が硬化物に対しても有用であることを確めた。なお, 3.5-キシレノールは<I>P</I>-トルエンスルホン酸とともに加熱すると分解するので交換反応剤としては適当ではない。また<I>P</I>-クロルフェノールには普通の蒸留によって除去できないフェノールと3.5-キシレノールの保持時間に近い不純物を若干含んでいるので注意する必要がある。ガスクロマトグラフに接続したカラムは堀内氏の場合を参考にテレフタル酸ジラウリルエステル25%を含む日立硅藻土れんが粒 (30~50メッシュ) を充填したカラム2mエパン750 (第一工業製薬) 20%を含むものを充填したカラムを直列につなぎ, 前者を試料注入口側にした。<BR>3.クロマトグラム上で成分フェノールとなるべく重ならない交換反応剤を見出すべく, 保持時間の長い<I>P</I>-tert-ブチルフェノール, O-フェニルフェノール, β-ナフトール, ピロカテコール, レゾルシン, ハイドロキノン, ビスフェノールAの各種フェノール類を選び検討した。このうち, <I>P</I>-tert.-ブチルフェノールおよびビスフェノールAは前述の3.5-キシレノールと同様に分解するので交換反応剤としては不適当である。O-フェニルフェノール, β- ナフトールは分解しないし妨害する不純物もないので採用できる。同じく, ピロカテコール, レゾルシン, ハイドロキノンも採用できるが, とくにレゾルシンは水蒸気蒸留されないためクロマトグラム上に現われないので成分フェノールのみを検出でき, 交換反応剤として非常にすぐれている。<BR>4.フェノール30%変性混合クレゾール樹脂硬化物の分析に交換反応剤レゾルシンを用いたときのクロマトグラム上のフェノール, m-クレゾール+<I>P</I>-クレゾールのピーク面積の比は1.0 : 2.9で, 補正して重量比を求めると約23%変性となった。この結果よリレゾルシンを用いて半定量的にフェノール硬化物の組成分析が可能であることがわかった。<BR>5.今迄はフェノールのみを検出してきたが, 処理方法を変えるとアニリンも検出できる。すなわち, 水蒸気蒸留を強アルカリ性下で行なうのである。この方法によってフェノール樹脂あるいはアニリン樹脂中のアニリンも分析できた。図1参照。右図は左図で使用した試料よリフェノール類を除去してからガスクロマトグラフで分析したものである。<BR>6.酸分解法の交換反応剤としてフェノール類のみが対象となっているが、アニリンも有効であることが分った。酸分解反応後の処理は次のようにした。反応系は硫酸を加えて強酸性にしておき水蒸気蒸留する。留出液をろ過して塩酸を加えて酸性としエーテルで抽出する。エーテル溶液は無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち, 濃縮してガスクロマトグラフにかける。図2参照。