解離性大動脈瘤手術の術中脊髄機能モニタリングにより追跡し得た脊髄機能の変動
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概要
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解離性大動脈瘤患者に術中脊髄誘発電位によるモニタリングを行い, 麻酔, 体温, 血液灌流量の変動が脊髄機能に与える影響を実際に観察することができた.患者は33歳男性で, 胸背部痛のため入院.以前解離性大動脈瘤でBentallの手術と, 両総頸動脈間バイパスおよび右鎖骨下動脈吻合術の手術を受けている.CTでは上行大動脈から下行大動脈気管支分岐部まで動脈瘤破裂による拡大がみられ, 人工血管による胸部大動脈全置換術が行われることになった.脊髄誘発電位は, 硬膜外電極をC5/6, T12/L1に設置し, DISA1500筋電計を用いて上行性と下行性の電位を記録した.コントロールの上行性電位はN1, N2からなり, 下行性電位は幅の広い1峰性をしめした.手術中はFF bypassの灌流量が20%に減少したときN1の振幅が26%に減少し, 17分後に元の灌流量に戻したところ92%に同復, また完全に灌流をストップすると5分後に波形が消失し, 15分後に灌流を再開したところ波形の振幅は95%に回復した.一方, 体温が10℃下した時点でN2消失とN1の振幅増大現象及び潜時の遅延がおこった.動脈性吻合のため術後の阻血性脊髄麻痺の危険性は少ないといわれているが, 現実には胸髄の主動脈数が少ないこととAdamkiewicz arteryの入る髄節に個人差があることから, 胸部大動脈をクランプするレベルや胸部大動脈を置換する範囲により脊髄の動脈吻合系に異常を生じ脊髄阻血を発生する可能性が十分有ると考える.しかし, 今回の結果から少なくとも15分位の血流遮断は可逆性を残していると思われた.脊髄モニタリングによる阻血性脊髄麻痺の予防には, 第1に脊髄のAdamkiewicz arteryに対する依存度を確認するため胸部大動脈のテストクランプを試みる方法, 第2に胸部大動脈を広範囲に置換するときは人工血管に肋間動脈を吻合する方法などが考えられた.
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