メチル水銀中毒に対する飼料中蛋白質の修飾作用
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概要
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飼料中の蛋白質含有量の差が, メチル水銀毒性の発現および臓器内への蓄積量におよぼす影響について, 高蛋白, 通常蛋白および低蛋白飼料を作製し, さらにそれぞれに対照群, 水銀単独群とセレン併用群を設けラットを用い15ヵ月間の長期投与実験を行い検討した.飼料中の蛋白含有量の違いによる体重増加量, すなわち発育の抑制は見られなかったが, 水銀投与の影響と思われる発育阻害が見られた.メチル水銀中毒による後肢の交叉現象は, 低蛋白飼料で飼育した水銀単独群でのみ4例認められた.しかも病理所見でもこれら中毒症状を示した4例では坐骨神経に脱髄を認め, 低蛋白で毒性が強まる事が示唆された.しかし, セレン投与によって脳内水銀量が高まるにもかかわらず同低蛋白飼料のセレン併用群では中毒症状は認められず, セレンのメチル水銀毒性発現に対する抑制効果も再確認された.また, 最初の発症例から最小発症量は平均飼料摂取量と飼料中メチル水銀の実測値からは310.8μ9/kg/dayで, メチル水銀添加の理論値からは258.5μ9/kg/dayと求められた.臓器内への蓄積量については脳と肝では水銀単独群, セレン併用群共に総水銀, メチル水銀の蓄積量は低>通常>高蛋白飼料の順で蛋白含有量の低い飼料群の方が蓄積量が高かった.しかし, 腎では明確な差は認められなかった.各飼料の水銀単独群とセレン併用群の比較ではセレン併用群の方が高い蓄積量であった.総水銀量に対するメチル水銀量の割合では, 低蛋白飼料の水銀単独群の腎でメチル水銀量の占める割合が他と比べ高く, 飼料中の蛋白は腸内細菌による脱メチル化に影響を与えている可能性が示唆された.
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