Chiari骨盤骨切り術の問題点:―特に骨盤変形について―
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概要
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Chiari骨盤骨切り術は先天性股関節脱臼の遺残変形に対し骨盤を横切移動することにより, 強固な屋根を形成する手術方法である.しかし当手術は両股正面X線像において, 骨盤を横切水平移動したように見られるが, 骨切り部を接点とする内外方への回旋移動である.このため骨盤環に彎曲と捻れが生じ斜狭骨盤となる.また成長終了後の女性においては, remodellingも期待出来ない.このため分娩時に児頭骨盤不適合となり帝王切開の危険性が生じる.著者は, Chiari骨盤骨切り術後の骨盤変形は成長終了後の妊娠可能な女性にとって重要な問題点であると考え, 当科にて当手術施行した18歳以上で妊娠可能な女性の症例について検討を加えた.症例は56例58関節, 病期別は前股関節症36例37関節, 初期関節症20例21関節, 手術時年齢は18歳~45歳平均27.2歳, 経過観察期間は1.5年~10年, 平均4.6年である.臨床的評価は日整会変股症判定基準に従った.X線学的検討は両股正面像にて骨片の移動を中心に, マルチウス撮影像にて骨盤入口形態を測定した.1部症例にはCT撮影を施行した.臨床的評価にては術前平均78.9点が術後95.7点と平均16.8点の改善をみたが, 特に疼痛の改善が著しかった.X線学的評価は移動率平均50.5%, CE角平均30.5度の改善が認められた.マルチウス撮影像においては全症例にて横径比の減少を認め, 術前・術後を比較すると平均8.5%の減少であった.この横径比と移動率, CE角改善度には負の相関関係が認められた.骨盤入口形態は術前ほぼ左右対称であるが術後その対称性がくずれ斜狭骨盤を生じた.この変形により帝王切開施行例が4例 (7.1%) 存在したが今後骨盤変形著明にて帝王切開が予想される症例を含めると10例 (17.9%) と高値を示した.臨床評価良好例は移動率45~55%, CE角改善度25~35度, 骨切り角度10~15度, 骨切りレベル8~10mmであった.骨盤変形を考慮すると移動率50%以下, CE角改善度30度以下とChiari手術方法が決定される.すなわち移動率50%以上の症例は骨盤変形による児頭骨盤不適合となる可能性が強く疑われる.以上よりChiari単独手術の限界はCE角0度と考えられる.CE角10度未満で適合性が不良で臼蓋被覆の不良なものが当手術の最適応と思われる.また全症例に術後の骨盤変形について説明する必要があると考える.
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