口蓋裂単独患者における初回手術後の開鼻声の有無に影響する要因の検討
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概要
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口蓋裂患者に対する手術目的は単に裂の閉鎖だけではなく, 良好な鼻咽腔閉鎖機能を得るためのもの, すなわち正常な言語獲得を主な目的としている.正常言語獲得の評価指標として, この鼻咽腔閉鎖機能をみているが臨床ではこれに一致度の高い開鼻声を判定にもちいている.口唇口蓋裂患者における言語障害に関連する各要因についてはすでに多くの研究業績があるが, 各要因の交絡の影響についての報告はまだなされていない.本研究では口蓋裂単独例における術後の開鼻声と各要因を層別解析したものである.研究対象は1980年4月から1992年5, 月までの12年間に, 昭和大学形成外科を訪れた口唇口蓋裂患者のうち初回口蓋形成術を受けた口蓋裂単独患者155例について検討した.各要因として個人の属性 (性別, 出生時体重, 口蓋の披裂程度, 手術時年齢) 手術手技及び術後経過所見 (瘻孔の大きさ, Push Backの程度, 軟口蓋の動き) を形成外科外来のカルテより得た.その結果, 開鼻声の有無との関連では, 性別, 出生時体重, 瘻孔の大きさ, では有意な差を認めなかった.また口蓋の披裂程度, 手術時年齢, 手術手技, Push Backの程度, 軟口蓋の動き, では有意な関連を認めた.そこでまず, 披裂程度, 手術時年齢および手術手技の3要因について, 各要因間の関連を考慮して開鼻声のある症例割合を検討してカテゴリーの合併をおこない, 一方の要因を層別変数とし他方の要因と開鼻声の有無との関連について層別解析をおこなった.その結果, 手術時年齢が直接的に開鼻声の有無に関連し, 口蓋の披裂程度, 手術手技は交絡要因とみなせた.次にPush Backの程度, 軟口蓋の動きを層別変数とし, 手術時年齢と開鼻声の有無との関連を検討した結果, Push Backの程度, 軟口蓋の動きのいずれを層別変数とした検討においても手術時年齢は開鼻声の有無と有意に関連することが明らかとなった.以上の結果, 手術時年齢は早期の方が開鼻声ある症例の割合を低くすることがわかり, 顎発育との関連を併せて今後の至適手術時年齢に示唆をあたえるものである.
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