ATP低血圧麻酔の循環動態及び臓器血流について
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概要
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Adenosine triphosphate (ATP) は, 強力な末梢血管拡張作用により血圧低下をもたらし調節性, 再現性, 確実性などの点で低血圧麻酔に有用であると考えられるが, 今回, 犬を用いて平均動脈圧50%降圧時における循環動態に及ぼす影響を具体的に検討した.その結果, 降圧はATP投与により瞬時に得られ, 降圧中, 心拍数の減少を認めたが, 動脈圧, 心拍数ともほぼ薬量依存的に効果が発現した.全末梢血管抵抗は, 動脈圧の低下率を上まわって著明に減少し, 同時に心拍出量の増加を認めた.この際, 心拍数減少を考慮すると著明な一回拍出量の増加が推測された.またPao<SUB>2</SUB>の上昇とPaco<SUB>2</SUB>の低下を認め, Base Excessはアシドーシスを示したが, pHの低下はPaco<SUB>2</SUB>の影響をうけて軽度であった.a-vDO<SUB>2</SUB>は減少を示したが, vO<SUB>2</SUB>は有意な変化を認めなかった.こうした作用を持つATPが, 同時に抗ショック作用を有し, 更に低血圧麻酔には禁忌とされている心疾患や, 肝障害, 腎障害の治療にも有用とされている点に注目し, 低血圧状態でも臓器血流の面で有利に働くのではないかと考え, 家兎を用いて平均動脈圧50%降圧下における心筋, 肝, 腎, 脾, 胃, 小腸, 大腸の各臓器における血流量の変化を水素クリアランス法により測定した.この際, 今日広く用いられているTrimetaphan (TMP) と比較検討したが, その結果, 血流増加を示したものはATPにおける心筋と肝であり, 逆に減少をみたものはTMPにおける心筋, 胃, 小腸, 大腸で, その他は有意な変化を認めなかった.以上によりATPは強力な末稍血管拡張により血圧下降を得ながら, 心拍出量を増加させ, 腎, 脾, 消化管で血流減少をみないばかりか, 心筋, 肝では増加を示し, 低血圧麻酔に使用した際の安全性が示唆された.
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