硬組織用超音波メスの実験的研究
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概要
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今回, 新しい骨切りの道具として超音波メスに注目し, 家兎および猫の椎弓切除, 家兎の大腿骨の骨切りなどの実験的な研究を行い, 臨床への有用性, 安全性について検討した.最適な条件設定は, 振幅: 65~75%, イリゲーション量: 10ml/min前後であった.椎弓切除の際に, 誘発電位の測定を行い, 超音波メスにおける椎弓切除が脊髄に及ぼす影響について検討した.誘発電位は, 術後で家兎にて平均67.7%, 猫にて77.6%, 術中最低値は家兎にて平均60.2%, 猫にて57.9%であった.椎弓切除後の脊髄の病理所見には機械的圧迫と思われる所見は無く, 脊髄内の出血, 浮腫, 脱髄所見も認められなかった.超音波メスの設定条件を変え骨切りを行った脱灰標本ではヘマトキシリンーエオシン染色にて骨細胞には明らかな変化および条件設定による違いは認められなかった.骨実質には比較的振幅設定の低い骨切り面においてエオシン染色性の強い部分が認められた.非脱灰研磨標本のコンタクトマイクロラジオグラフィーではイリゲーション量設定が0ml/minの骨切り面において, 一部熱によると思われる硬化像が認められた.骨切り面の走査電子顕微鏡所見では, ノミでは均一で細かい凸凹があるのに対し, 超音波メスでは比較的荒く不整な凸凹が認められた.骨の温度変化ではイリゲーション0ml/minでは振幅50%で120.8℃, 75%で123.7℃, 100%で120.1℃であり, それぞれに有意差は認められなかった.振幅75%ではイリゲーション0ml/minで123.7℃, 10ml/minで59.5℃, 20ml/minで52.3℃であった.10ml/minと20ml/minの間に有意差は認められなかったが, イリゲーション熱の発生を有効におさえていた.適切な設定および方法で超音波メスを用いることにより正確でかつ安全な骨切りが可能で, 病理組織学的にも骨に負担のかからないことが確認された.また椎弓切除時における誘発電位においても急激な低下は認められず, また摩擦による骨切り面の熱の発生は, イリゲーションを適切な設定値で行うことにより抑制されており, 病理組織学的にも熱によると思われる変化は骨および脊髄の両者において認められなかった.以上のことよりこの硬組織用超音波メスは整形外科領域における骨切り特に脊椎・脊髄外科への臨床応用が期待されるものである.
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