近赤外分光法を用いた起立性調節障害児の脳血流の変化
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概要
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起立性調節障害 (Orthostatic Dysregulation: 以下ODと略す) は思春期前後に多く発症する自律神経失調症の一つであり, 交感神経, 副交感神経の不均衡により, 起立時の血圧低下などの体循環の変化に伴い脳循環が変化するために, めまいや立ちくらみなどの症状が生じると考えられている.近赤外分光法を用いてOD児の起立試験時における脳血液量を測定し, 体循環の変動との関係を検討した.小児起立性調節障害研究班において定められた診断基準に基づいてODと診断された9歳から15歳までの19例, 男児8例, 女児11例を対象とした.近赤外分光法によって測定された酸素化ヘモグロビン (以下oxyHbと略す) , 還元型ヘモグロビン (以下deoxyHbと略す) , 脳血液量の変化は次の4つの型に大別することができた.Type 1 : 0xyHb, deoxyHb, 脳血液量にはいずれも変化を認めない.Type 2 : oxyHbが減少し, deoxyHbには変化を認めず, 脳血液量は減少する.Type 3 : oxyHbは減少し, deoxyHbは増加し, 脳血液量には変化を認めない.Type 4 : oxyHbには変化を認めずdeoxyHbは増加し, 脳血液量は増加する.コントロール群では脳血液量に変化を認めたものは1例もなかった.OD群ではoxyHb, deoxyHbおよび脳血液量に変化が認められなかったもの (Type 1) は3例だけであった.脳血液量の減少を来したもの (Type 2) は8例であった.脳血液量に変化を認めなかったもの (Type 3) 5例と脳血液量の増加を来したもの (Type 4) 3例は相対的にoxyHbが減少し, deoxyHbが増加しており, 脳静脈血のうっ滞が存在することが考えられた.臨床症状および起立試験の陽性率は各タイプ間には明らかな差は認められなかった.また各タイプ毎に心拍数, 収縮期血圧, 脈圧, 平均血圧の変化量を検討したが有意差を認めなかった.塩酸ミドドリンを2週間以上継続内服している児5例に対しても同様の検査を行ったところ, 症状の改善とともに, 脳血流の変化, oxyHbの減少の改善を認めた.oxyHbの減少の改善が症状の改善と関係のあることが考えられた.以上, OD児において起立試験時に脳循環が変化することが確認された.しかしODの脳循環の変化を体循環の変化のみから説明することはできず, 脳循環の受動的な変化以外に脳血管自体の反応性その他の要因の関与が示唆された.またODの脳貧血症状発現と脳循環の変化との関係は明らかにできなかった.
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