下垂体TSH細胞の分泌と分泌顆粒膜の運命に関する電子顕微鏡的研究
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概要
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下垂体前葉のthyroid stimulating hormone (TSH) 細胞の分泌顆粒の集団開口分泌機序ならびに開口分泌後の顆粒膜の運命を明らかにするために, 合成thyrotropin releasing hormone (TRH) 投与後のラット下垂体前葉のTSH細胞について, horseradish peroxidase (HRP) 標識法とacid phospatase (AcPase) 活性の電顕的組織化学によって検索した.生後約5週齢のWistar系雄ラットの大腿静脈にHRPを注射し, 30分後に合成TRH (200/μg/0.4ml) を注射した.合成TRH注射後10, 30分および60分に下垂体前葉を摘出し, 2%パラホルムアルデヒド, 2%グルタールアルデヒド混合液にて浸漬固定後, diaminobenzidine反応を行った.AcPase反応は合成TRHのみ投与した群について行った.1.合成TRH投与後, 10, 30分および60分のTSH細胞において, 分泌顆粒の単一ならびに集団開口分泌像およびendocytosisの過程を示す被覆小陥凹が細胞膜や集団開口分泌部の基底部にしばしばみられた.2.HRP静注後30分に合成TRHを投与した群では, TRH投与後10分のTSH細胞の細胞質周辺部にHRP分子を取り込んだ被覆小胞がみられた.TRH投与後30分では, 分泌顆粒の集団開口分泌の陥凹部にHRP分子の取り込みが認められた.細胞質内の分泌顆粒の芯を多数含んだ大きい空胞や明るい小胞内にもHRP分子の取り込みがみられた.このようなHRP分子を取り込んだ小胞は拡大したゴルジ装置の近旁に数多く観察された.TRH投与後30分と60分のTSH細胞において稀にゴルジ装置のtrans側のゴルジ槽内にHRP分子が僅かに認められた.3.合成TRH静注後10, 30分および60分のTSH細胞において, AcPase反応を行った結果, TRH投与後30分で拡大したゴルジ装置のtrans側のゴルジ槽に強いAcPase活性が認められた.そのほか, ゴルジ装置, およびその近旁の小胞にもAcPase活性がみられた.また, 回収小胞の集合体に一次ライソゾームが融合している像もみられた.これらの所見から, TSH細胞の分泌顆粒の集団開口分泌は開口分泌している分泌顆粒に他の分泌顆粒がつぎつぎと融合し, 連続して集団開口分泌することが示唆され, さらに開口分泌後endocytosisによって細胞質内へ回収された顆粒膜の大部分はライソゾームによって消化処理されるが, 一部はゴルジ槽の膜に直接組み込まれて分泌顆粒の限界膜として再利用される可能性のあることも示唆された.
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