慢性分裂病患者の免疫学的検討
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概要
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精神分裂病患者にみられる免疫機能の変化については種々の報告がある.本研究では長期服薬中の慢性分裂病患者の免疫機能を健常対照群と比較し, さらに精神症状や抗精神病薬の服用量及び服薬期間などとの関係を検討した.対象は1) K精神病院に1年間以上入院中, 2) 年齢が20~59歳, 3) 現在, 免疫機能に影響を与える疾患に罹患していないという条件を満たす精神分裂病41症例 (男19例, 女22例, 年齢46.2±7.9歳 (M±SD) ) である.対照は精神および身体疾患に罹患していない者13名 (男6名, 女7名, 年齢40.3±14.8歳 (M±SD) ) である.分裂病患者および健常対照者に対しては, 本研究の目的を説明し同意を得た.分裂病患者群および健常対照群について, 白血球数, リンパ球数, 血清免疫グロブリン (IgG, IgM, IgA) を, リンパ球SubpopulationとしてCD3 (T cell) , CD4 (helper T ce11) , CD8 (suppressor T ce11) , CD20 (B ce11) , CD25 (IL-2受容体陽性細胞) , CD57 (NK cell) を測定した.精神症状評価にはPANSS (Positive and Negative Syndrome Scale) を用い, 分裂病症状の目立つ群を1群とし, 分裂病症状の目立たない群を2群とした.抗精神病薬の服用量はhaloperido1に換算し評価した.結果としては, 精神分裂病患者では健常者に比べてCD3, CD4, CD4/CD8比が低値を示した.分裂病患者において服薬期間, haloperidol血中濃度と免疫機能との問に有意の相関は認めなかった.抗精神病薬の経口服用量のhaloperidol換算量はIgGと有意な負の相関を認め, またCD8とは正の相関を認めた.分裂病症状により分類した場合は, リンパ球数においては2群は1群, 健常者より有意に高かった.CD3, CD25において, 1群は2群, 健常者より有意に低下していた.CD8において, 2群は1群よりも有意に高かったが, 両群とも健常者と有意な差を認めなかった, 以上の結果から抗精神病薬による免疫機能への影響も考慮する必要があるが, 精神分裂病患者ではT細胞系の免疫機能が低下している可能性があると考えられる.その原因としてIL-2を含めたサイトカインの関与なども検討される必要がある.
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