ヒト変形性膝関節症の動物実験モデルとしての変形性膝関節症自然発症型C57ブラックマウスに関する研究
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概要
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変形性膝関節症 (OA) が自然発症するC57ブラックマウスを用いた研究は国内でもいくつかの発表があるがいずれも病理組織学的な検討に限られたものであり, 臨床的な見地をも含んだ総合的な所見を検討した報告はない.今回, 生後6, 12, 24カ月のOA自然発症型C57ブラックマウス (以下OAマウス) と, 対照群として生後6, 12, 22カ月のC57ブラックマウス (contro1マウス) を対比させながら膝関節のOA変化を初期から末期に至るまでの進展過程を観察し, X線学的, マクロ的, 病理組織学的所見からなる総合的検索を基に詳細な検討を行った.その結果, 他の報告と比べてOAマウスはOA発症頻度は高く, OA重症度も進行していた.軟X線所見では, contro1マウスに比べOAマウスは月齢の進行に伴い関節裂隙の狭小化, 軟骨下骨の硬化像, 骨棘形成が高頻度に認められた.マイクロ顕微鏡視下におけるIndianinkによる関節軟骨面の評価では, OAマウスにおいて, 初期よりびまん性に僅かに軟骨表面の染色が認められ, 24カ月齢において全軟骨層が欠損して骨が露出し象牙化が認められた.病理組織学的には, contro1マウスに比べOAマウスは, OA進行に伴いcellcloningやclusterformationが認められ, 6カ月齢で表層から中間層のglycosaminoglycansが減少し, 12カ月齢以後では全層において減少していた.コラーゲン線維も全層において減少および変性が認められ, OAにおける合成能低下ならびに軟骨変性と考えられた.今回の実験で, OA自然発症型C57ブラックマウスは, 関節裂隙の狭小化, 軟骨下骨の硬化像, 骨棘形成および初期より関節軟骨の粗造化, 剥離, 脱落があり, 深層に及ぶコラーゲン変性を認め, 他の報告に比べヒトOAとの類似性が高かった.ケラタン硫酸については議論が分かれるところであるが, 今後の検討を要する.以上の結果より自然発症型変形性関節症モデルとしてのC57ブラックマウスは, 個体の小ささによる実験手技の難度は高いもののヒトOA変化と類似点が多いことが検証され, 変形性関節症の自然発症機序の研究における実験モデルとして非常に有用であると考えられる.
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