Monoamine Oxidaseに関する研究 (第43報) 脳内Monoamine Oxidaseに対する性ホルモンの影響
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概要
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ラット脳内MAO活性に及ぼす性ホルモンの影響について検討した.<BR>大脳および脳幹部のミトコンドリア分画を標品とし, 酸素電極法により, tyramineを基質としてMAO活性を測定した.MAO活性値は組織の乾燥重量あるいは含有蛋白量1g当りの1分間に消費する酸素量とした.<BR>出生直後のラット脳内MAO活性値は乾燥重量当りでも, また蛋白量当りでも成熟時の約50%であった.出生直後および1週齢のMAO活性は雌性ラットの方が雄性ラットより5-10%高値を示した.その後雌雄ともにMAO活性は増加し, 4週齢で成熟時レベルの約90%の値を示した.5-8週でも雄性では更に僅かに増加する傾向が認められたが, 雌性では7, 8週齢で逆に減少する傾向が認められ, 8週齢では雌雄の脳内MAO活性に有意の差が認められた.乾燥重量当りのMAO活性値の増加率は蛋白量当りのそれよりも大きく, また雄性での増加率は雌性のそれよりも高かった.すなわち, 8週齢において蛋白量当りのMAO活性の増加率は雄性では出生直後の183%, 雌性では152%, 乾燥重量当りの活性増加率はそれぞれ223%, 178%であった.脳組織1g当りの乾燥重量は出生直後では雄性は77mg, 雌性は78mgであり, 生後1-2週の間に急激に増加したが, その後は僅かな増加を示し, 2週以降の平均値では雄性で91mg, 雌性で89mgであった.含有蛋白量もほとんど同様の変化を示し, 出生直後で雄性では6.9mg, 雌1生では6.8mg, 2週以降の平均値は雄性で9.7mg, 雌性で9.3mgであった.<BR>ラット脳ミトコンドリア分画のMAO活性に対するtestosterone, 17β-estradiol, progesteroneのin vitroに於ける影響は, 性差並びに蛋白量, 乾燥重量当りでの差は認められなかった.これら性ホルモンの中, 17β-estradiolのみが, MAO活性を明らかに抑制し, この抑制作用はdose-dependentであった.すなわち, 17β-estradiolによるMAO活性の抑制率は1mMで24%, 0.1mMで11%, 10μMで5%であった.<BR>雌雄の10-14週齢ラットに性ホルモンを皮下投与した2時間後の脳内MAO活性はtestosterone4mg/kg投与ではほとんど影響が認められなかったが, 17β-estradiol400, ug, /kg投与では5-8%抑制された.なお, 雄性ラットにprogesterone 4mg/kgを投与してもMAO活性には変化が認められなかった.性腺摘出後6日目の雄性ラットのMAO活性値は対照群のそれの93-9096に減少したのに反し, 雌性ラットで108-11096に増加した.去勢4-5日目のラットにtestosteroneを1-2mg/kg皮下投与したとき, 脳内MAO活性は雌雄とも若干増加した.17β-estradio1 100μg/kg投与では脳MAO活性には雄性ラットでは有意の変化はみられなかったが.雌性ラットでは対照値の88%に減少し, 200μg/kg投与では雄性ラットでは対照群値の86%に, 雌性ラットでは79%に減少した.以上のin vitroに於けるラット脳ミトコンドリアMAO活性への性ホルモンの影響は乾燥重量当り, 蛋白量当りのいずれの場合に於ても, ほとんど同様であった.<BR>以上の実験結果からラット脳ミトコンドリア分画のMAO活性は17β-estradiol投与によって抑制されるが, その作用機序が直接作用であるか否かに就ては今後の研究結果に待たねばならない.
- 昭和大学・昭和医学会の論文