認知症高齢者に対する「絵画療法プラン」の実践と評価
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概要
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【目 的】 認知症高齢者に対して「絵画療法プラン」を作成, 実践し, (1) 絵画療法が認知症高齢者にもたらす効果, (2) 認知症高齢者の作品の特徴, (3) 肯定的反応および否定的反応を示した絵画療法の画題, (4) 絵画療法を効果的に進めるための介入方法を明らかにした. 【対象・方法】 対象者は, 認知症をもつ年齢65歳以上の高齢者で, 認知症グループホームHを利用し, 調査協力を得た5名である. 3か月間に, 週1回, 60分程度の「絵画療法プラン」を計12回介入した. 評価は内田1の認知症ケアのアウトカム評価票, BEHAVE-ADを使用し, 各回の絵画作品の評価も行った. また対象者の反応をカテゴリー分類した. 【結 果】 対象者5名すべて女性であり, 年齢は86±5.9歳 (平均±SD), 全員がアルツハイマー病であった. (1) 絵画療法が認知症高齢者にもたらす効果は「周辺症状」,「介護ストレス・疲労の様子」,「趣味・生きがいの実現」,「役割発揮の有無」の改善と,「制作への自主性」や「他人の作品を褒める」などの肯定的な行動や言動をもたらした. (2) 作品は色あざやかで抽象度が高く大胆な構図で, 単純化などの特徴がみられた. (3) 認知症高齢者に肯定的な反応であった画題は「色彩が原色で彩度が高く, 工程が単純, 写実ではなく自由表現をいかした画題」「昔使っていた材料を使った画題」「生活の中で役に立ち, 手芸を取り入れた画題」「色や素材を選択できる画題」であった. (4) 絵画療法には肯定的な言動の反面「できない」という, 相反する感情もあった. 【結 語】 絵画療法は, 認知症高齢者の精神活動によい効果をもたらすが, ケア提供者が絵画療法プランを取り入れることで, 認知症高齢者のいきいきとした反応や言動を発見することができる. 介入により新たに発見したことをアセスメントし, 認知症高齢者ができることを促すようなケアを行うことが求められる. 落ち着いた環境を整え, 画題と介入方法を考慮する必要がある.
著者
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内田 陽子
群馬大学医学部保健学科
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内田 陽子
群馬大学医学部保健学科看護学専攻
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川久保 悦子
群馬パース大学保健科学部看護学科
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内田 陽子
群馬大学大学院保健学研究科看護学講座
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小泉 美佐子
新潟県立看護大学地域生活看護学領域
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小泉 美佐子
新潟県立看護大学
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