多発性骨髄腫に対するサリドマイド治療中に肺塞栓症を発症した血液透析症例
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概要
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症例は76歳,女性.慢性糸球体腎炎による慢性腎臓病stage5にて1992年5月に血液透析を導入し,週3回の維持血液透析を施行していた.両肩の疼痛,汎血球減少,血清総蛋白の上昇を契機に,精査にて血清IgA高値を認め,2008年6月多発性骨髄腫(IgA-λ型)と診断された.2009年8月より多発性骨髄腫に対してMP療法(メルファラン6mg/日,プレドニゾロン60mg/日,4日間内服)が開始となった.血清IgAは751mg/dLから514mg/dLと減少し,MP療法は効果的で,副作用も認めなかった.MP療法1クール目から5週間後にMP療法2クール目を施行,さらにサリドマイド100mg/日の導入となった.サリドマイド導入1週間後より右下腿の浮腫が出現し,血液透析中に血圧低下を認めるようになった.2009年10月,浮腫精査・血圧低下精査目的に維持血液透析クリニックより当院当科紹介入院となった.入院時,呼吸困難と著明な右下腿浮腫と把握痛を認め,血液検査にてFDP 44.3μg/dL,Dダイマー22.75μg/mLと異常高値を認めた.胸部造影CT,肺動脈造影にて,左肺動脈主幹部に塞栓と考えられる造影欠損部位を認め,深部下腿静脈血栓症,肺塞栓症と診断した.へパリン持続投与を開始し,下大静脈フィルター留置術を施行した.加療により深部下腿静脈血栓症,肺塞栓症は改善を認めた.サリドマイドは多発性骨髄腫に対する有効性とともに,肺塞栓症の副作用も報告されている.サリドマイドは通常使用量は100〜400mg/日であり,本症例では100mg/日と比較的低用量投与であったが,肺塞栓症を発症した.血液透析患者において,多発性骨髄腫に対して低用量でもサリドマイドの使用は,肺塞栓症の引き金になる可能性を示唆した症例であり,今後の血液透析患者におけるサリドマイド使用に関して重要な症例と考えられたため報告した.
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