船尾管オイルシールの圧力下における変形について
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概要
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オイルバス式船尾管軸受のオイルシール装置の損傷としては, シールリングに発生するクラックが最も頻度が多く, かつ重大な問題となっている。このシールリングのクラックは, (1) リップ摺動面に多数発生する細いクラック, (2) リップの付根およびベローの弯曲部に発生する円周方向の比較的長いクラック, の2種に分けられる.これらのクラックの原因については種々想像されるが, 特に大形船においては, 過大な圧力による変形および応力集中があるのではないかと思われる.すなわち, バラスト状態では低喫水となることにより, 重力タンクと喫水とのHead差が, 50, 000DWTクラス以上の船においては一般に0.5kg/cm<SUP>2</SUP>以上の圧力となり, 大形化とともに増大する.<BR>そこで#3シールリングを対象とし, かかる大きな圧力がかかった場合の実態を把握すべく, 670形シールリングによる水圧テストを行なった.試験装置は, 現装の670形シール装置と同寸法に製作し, ライナーは偏心を零として組み立てた.圧力はギアポンプによりかけ, 各圧力によるベロー, リップの変形および変位を計測するとともに, ライナーに設けたサイトグラスより, リップの当たり状況を測定した.<BR>テストの結果, 圧力変化によるベローおよびリップの変形状態を把握することができ, ベローの変形はリングの移動を自由にした場合と押えた場合とではかなり相違し, ケーシングおよびリングへの締付部で鋭い曲げを受けることを確認した.リップの当たりについては, 1kg/cm<SUP>2</SUP>ですでにベタ当たりになることが認められた.またシールリングに背圧をかけた場合, 1.1mの水頭で漏洩を起こすことを確かめ, シールリングの耐圧強度テストの結果, 新品のシールリングの強度は十分であることを確認した.