粘膜免疫システム—生体防御の最前線
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概要
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生体防御の上で極めて重要な位置にある粘膜には, 粘膜免疫として知られる全身免疫とは異なる巧妙な免疫システムが構築されている. 粘膜固有の免疫担当細胞としてB1系B細胞やγδT細胞, またNK22細胞などが見出され, それぞれ重要な役割を果たしている. また, 粘膜面に, 病原体に対する防御に不可欠な, 抗原特異的分泌型IgAを効率的かつ臓器特異的に誘導するメカニズムとして, MALT (粘膜関連リンパ組織) を中心とした粘膜免疫システムが構築されている.頭頸部領域での粘膜免疫については, MALTに相当するものとしてヒトにおけるWaldeyer輪がよく知られている. マウスなどでは扁桃が存在せず, 鼻腔のNALT (鼻咽腔関連リンパ組織) がそれに相当するものと考えられる. 加えて近年, 鼻腔や口腔のみならず眼結膜や涙嚢にもCALT (結膜関連リンパ組織) やTALT (涙道関連リンパ組織) などのMALTが見出され, 全体として頭蓋顔面粘膜免疫システムという広大な粘膜免疫ネットワークを構築することが明らかになってきた. さらに, リンパ節や腸管のMALTであるPeyer板が胎生期に発達するのに対し, NALTやTALTは生後に発生し, また組織形成に必要な遺伝子群も明確に異なるなど, 非常にユニークな発生過程をとっている. NALTやTALTの形成に関わる遺伝子は頭蓋顔面粘膜免疫システムの鍵を握るものと予想され, その究明が待たれる.頭蓋顔面粘膜免疫システムの臨床応用として, 経鼻ワクチンが挙げられる. 現時点では米国でインフルエンザワクチンとしてFluMistが使用されている. 点鼻により痛みもなく, また効果的に気道系での免疫が得られる, 優れた経鼻ワクチンの開発は呼吸器感染症対策のために必須であるが, 嗅粘膜からの吸収による中枢神経系への移行が懸念されてきた. Nanogelは新しく開発された生体用の素材で, マウスでの検討では, ワクチンデリバリー用素材として用いると中枢神経への移行もなく, 極めて効率的に鼻汁中でのIgA抗体を誘導できており, 今後の発展が期待できる.
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