有機リン化合物中毒における流涎症状について : とくに血液・臓器コリンエステラーゼ阻害との関係から
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概要
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防疫用殺虫剤として広範囲に使用されている有機リン化合物の中毒では, 症状の1つとして唾液分泌亢進に伴なって流涎症状がみられる。そこで本論文では, 紙球吸着法という簡便法によりラットの口腔内唾液量を数量化するとともに, 有機リン化合物中毒による流涎症状と血液や脳, 唾液腺のコリンエステラーゼ (ChE) 阻害との関係や, アトロピンやOxime剤などの解毒剤による流涎抑制効果について検討し, 以下の結論を得た。<BR>1. 紙を丸めた紙球に口腔内唾液を30秒間吸着させるという紙球吸着法では, 正常ラットの口腔内唾液量は, 24.4±5.71mg (n=122) であった。また唾液分泌促進作用のあるピロカルピンや, 反対に抑制作用のあるアトロピンの投与により, 口腔内唾液量は正常ラットの6.06, 0.40倍に各々増減することから, 本法による口腔内唾液量の数量化は, 簡便でかつ有効であることを示した。<BR>2. 4種の有機リン化合物 (Dichlorvos, Fenthion, Fenitrothion, Pyridaphenthion) の経口投与 (LD<SUB>50</SUB>×1/2量) による流涎症状の経過は, 化合物によりかなり異なるものであった。Dichlervos投与群ではその症状は軽く, また回復も早いが, Fenitrothion投与群では流涎症状が最も著しくて正常ラットの7.0倍もの口腔内唾液量であった。<BR>3. 有機リン化合物による流涎症状に対して, アトロピンは著しい流涎抑制効果を示し, またPAMやToxogonineのようなOxime剤も, 投与後2〜3時間までは抑制する作用を示した。<BR>4. 有機リン化合物の主な作用機序であるChE阻害の経過は, 流涎症状の経過に比べると時間的におくれてはいるが, 相関関係がみられた。唾液腺ChEおよび血球, 脳のChE阻害が流涎症状と関連することを示した。
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