Streptococcus mutansの菌体外グルコシルトランスフェラーゼ投与による実験齲蝕の誘発の試み

概要

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Straptococcus mutansのグルコシルトランスフェラーゼ (GTF) はスクロース存在下に, 付着能を欠落したS. mutans変異株やEsherichia celiの菌体および細菌細胞とほぼ同大のレジン球をガラス壁に付着せしめるという前報の成績に基いて, スクロース飼育したゲッ歯類にGTF投与することによって口腔常在菌 (主としてLactobacillus) が歯面に定着し, 歯苔形成ひいては齲蝕の発生を促すかどうか検討した。 S. mutans AHT-SMR 1株から得たGTFはスクロース存在下にL. casei PSR 3002株およびハムスター歯苔構成微生物をガラス壁に付着させたが, ラットにおいてGTF投与下にL. caseiを接種しても同菌は歯面に定着せず, 有意の齲蝕の発生はなかった。また常在Lactobacillusを保有するハムスターにGTFを投与しても有意な歯苔形成と齲蝕発生は認められなかった。しかし, GTF投与群では, 対照群に比べて歯苔形成と齲蝕のスコアが高い傾向が見られ, 齲蝕感受性の高い一部の歯牙では有意な差が認められた。このことからS. mutansの菌体外GTFがスクロース存在下に他の口腔常在菌を歯面に定着させ, 歯苔形成ひいては齲蝕の発生を促す可能性もなお残された。