胸膜中皮腫の外科治療を巡る諸問題 : —EPPかP/Dか—
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概要
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従来,わが国の胸膜中皮腫に対する外科分野の議論は主に安全且つ確実な胸膜外肺摘除術(extrapleural pneumonectomy, EPP)の術式を巡ってなされてきたが,今後は胸膜切除/剥皮術(Pleurectomy/decortication,P/D)との比較が重要になる.そこで今まで検討されることの少なかった下記の5項目ついて考察を加えた.I.EPPの成績と限界.Trimodalityによる集学的治療の成績と展望を述べた.II.Radical P/D(壁側および臓側胸膜の肉眼的全切除)の現況.自験65例(EPP 31例,P/D 34例,内Radical P/D 6例)の成績をまじえ,EPPに劣らない成績を示す本術式の適応について述べた.III.自動縫合器を用いたEPPの術後3日目に発症した肺障害に対する考察.原因としては1)臨床的に確認し難い極小断端瘻の先行とこれに起因する対側肺吸引,2)術中,術後のover-hydration,3)原因不明のARDS,が考えられる.1)2)であるならば外科医の責任においてこれを回避する必要がある.IV.EPPと胸内筋膜(EF)の関係.胸内筋膜は切除標本側にあるか,胸壁に残るか,明らかでない.代表的な教科書数冊の記載から判断するとEFを弾力線維の膜とするよりも疎なareolarな結合組織の層と考えるのが妥当である.外科医はこの層を剥離する.V.今後の課題.EPPにおけるmortalityを5%以下に抑え,早期例における病理診断の精度向上を計ることが今後の臨床研究の発展に不可欠である.
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