純ゴム系および充てん剤系SBR加硫物の引張破壊特性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
加硫ゴムの破壊機構を明らかにする研究の一還として, 純ゴム系および充てん剤系SBR加硫物の引張破壊試験を実施し, ゴムの高次構造との対応を明確にするための動的弾性率, NMR, 誘電分散などの測定結果との比較検討から, 次のような結論がえられた.1) 網目鎖密度vsが一連に異るSBR純ゴム加硫物 (橋かけ構造が同じで, その数のみが異る系) では, の増加に伴って転移温度は増加するが, 破断時伸びの最大を与える温度はほとんど変化しない, また, vsの増加に伴って伸びの最大値は減少するが, 単純な網目鎖構造の伸び切り状態との対応から予想されるような, vs-1/2に比例するという関係は成り立たない.2) カーボンブラック充てん量が一連に異るSBR加硫物 (ゴムマトリックス部分の構造は, 充てん剤量の影響を受けない. したがって, 転移温度も変化しない) では, 充てん剤量の増加によって破断時伸びの最大値はほとんど変化しないが, その最大を与える温度は高温側にシフトする. また, 充てん剤量の増加に伴って, 破壊包絡線の“2段階屈折現象”が顕著になる.3) 上記の1), 2)の現象は, 純ゴム系加硫物では, 網目鎖密度の増加により系の緩和時間が短くなること, 充てん剤系加硫物では, 充てん剤の増加に伴って系の緩和時間が長くなることによって, それぞれ説明された.4) 充てん剤系SBR加硫物の破壊は, 主としてゴムマトリックス相において生じ, ゴム充てん剤間の破壊はほとんど生じない. 破断面のカーボンブラック出現率は, 伸びが最大となる破壊条件付近で最大となる.5) 充てん剤系SBR加硫物の破壊包絡線にあらわれる2つの屈折点のうち, 高温側の屈折点に対応する温度TF2は, 充てん剤周辺の稠密構造の変化や, 充てん剤がその相互位置を変化することによる, 局部応力の平均化に基づく緩和時間の長さに対応するものであろう.
- 社団法人 日本ゴム協会の論文
著者
-
藤本 邦彦
ブリヂストンタイヤ
-
右田 哲彦
ブリヂストンタイヤ(株)調査企画部
-
粕谷 辰男
ブリヂストンタイヤ (株) タイヤ開発研究部
-
右田 哲彦
ブリヂストンタイヤ (株) 中央研究所
-
粕谷 辰男
ブリヂストンタイヤ(株)中央研究所
関連論文
- 28 非空調室の室温変動実例と理論解析 : 間仕切パネルの熱的性能(環境工学)
- ゴム粉複合加硫物強さに対する加硫剤最適量
- ゴムの振動疲労
- ゴムの破壊過程の研究 (その6) : 加硫ゴムの疲労破壊での限界応力と伸び
- ゴムの破壊過程の研究 (その5)疲労破壊での臨界クラックと疲労破壊機構
- ESRによるカーボンブラックの作用機構の研究
- ゴムの不均質構造と破壊挙動に関する熱力学的考察
- 主鎖構造の異なるSBR加硫物の引張破壊特性 : ゴムの破壊機構に関する研究 (第8報)
- ゴムの破壊過程の研究 (その 2) 一定応力繰り返し条件下での疲労破壊過程 : ゴムの破壊機構に関する研究 (第9報)
- ゴムの破壊過程の研究 (その1) : ゴムの破壊機構に関する研究 (第7報)
- ゴムの破壊特性の温度依存性を記述する経験式
- 充てん剤系SBR加硫物の破壊包絡線における屈折現象
- 純ゴム系および充てん剤系SBR加硫物の引張破壊特性
- 純ゴム系および充てん剤系NR加硫物の引張破壊特性
- 共重合体加硫ゴムの引張破壊特性 : ゴムの破壊機構に関する研究 (第2報)
- 天然ゴム加硫物の破断時伸びについて
- スチレン量の異なるSBR加硫物の引張破壊特性
- 充てん剤系加硫ゴムの伸張による分子配向
- スチレン含量の異なるSBRとBRの相溶性 : ポリマーブレンドの研究 (第2報)
- ゴムの誘電分散
- ゴムの科学はどこへ行く
- 力学分散から見た SBR/BR ブレンド加硫および未加硫ゴムの相溶性 : ポリマーブレンドの研究 (第3報)
- ゴム
- 加硫天然ゴムの伸張時のポアソン比について
- ゴム粉〜マトリックスゴム界面近傍での硫黄移行現象と自由体積の不連続性-1-
- 熱分解回収カ-ボンの物理的性質
- 充てん剤系未加硫ゴムの分子運動の研究
- 円柱型ゴムの局部ひずみと疲労寿命
- SBR〜低分子物質混合加硫物系の力学特性
- 充てん剤系加硫ゴムの構造と力学的刺激による構造変化
- 充てん剤加硫ゴムの熱刺激による構造変化と力学的刺激との類似性
- 機器から見たゴムの物理と化学-終-核磁気共鳴(NMR)(講座)
- ゴムの不均質構造と破壊ならびに疲労現象
- 未加硫ゴム〜低分子物質混合系の研究
- 材料設計 (最近のゴム配合設計(特集))
- 複合材料 (ゴム科学の現状(特集))
- ABSTRACTS