蛋白質摂取量が動物に与える影響について(第4報) : 幼白鼠の臓器成分と尿中アミノ酸について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
低蛋白質食を与えると,白鼠の尿中窒素成分中アミノ態窒素の比率が高まることが,前報(1)により明らかにされた.本報では低蛋白質食を与えた由鼠の尿中アミノ酸(尿中のペプチドに含まれるアミノ酸と遊離に存在するアミノ酸を含む)を分析し,どのような種類のアミノ酸の排泄が増すかを明らかにしようとした.また,栄養価の低いグルテンを,唯一の蛋白質源として与えた場合の尿中アミノ酸の変化についてもあわせて研究した.さらに,低蛋白質食やグルテン食を与えた場合の肝臓成分と血清コレステロール濃度の分析もあわせ行なった. (1) グルテン15%の飼料を与えた区は,カゼイン7.5%区よりも成長が悪く,肝臓の粗蛋白質含量も低かった,カゼイン7.5%区は明らかに脂肪肝の状態を呈していたが,グルテン15%区は正常であった. (2) カゼイン7.5%区の尿は,カゼイン15%ないし25%区のそれに比べ,尿中アミノ態窒素の比率が著しく高く,アミノ酸組成も異なっていた.すなわち,低蛋白質食区では,尿中のタウリンと“タウリン後続物”が激減し,逆にグリシンが著しく増し,グルタミン酸も多くなっている. また,低蛋白質食区のアミノ態窒素の比率の増加の約30%以上がグリシンの増加により説明され,50%以上がグリシン,グルタミン酸,アスパラギン酸,スレオニンとセリンの和の増加により説明される. したがって,低蛋白質食による尿のアミノ態窒素の比率の増加は,各アミノ酸が一様に増加するためではなく,グリシンを先頭とする上記数種のアミノ酸の著しい増加をともなっている. (3) 栄養価の低いグルテンを蛋白質源として与えた区の尿では,排泄される全窒素量が著しく高く,加えてアミノ態窒素の比率も若干高い.したがって,カゼイン食区に比べて著しく多量のアミノ酸が尿に排泄されているわけであるが,その尿中アミノ酸組成をみると,アラニンとバリンが若干増加している他は,カゼイン食区と余り変らない,それ故,摂取蛋白質のアミノ酸の不均衡にもとづいて,尿へのアミノ酸の排泄が増す場合でも,尿のアミノ酸組成は余り変化しないと思われる.この点は低蛋白質食の場合と著しく対照的である.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
著者
関連論文
- 蛋白質摂取量が動物に与える影響について(第4報) : 幼白鼠の臓器成分と尿中アミノ酸について
- 蛋白質摂取量が動物に与える影響について(第3報) : 成長時期別にみた白鼠に及ぼす低蛋白質食の影響
- 蛋白質摂取量が動物に与える影響について(第2報) : 低蛋白質飼料による白鼠の諸器官尿と血液成分の変化
- 蛋白質摂取量が動物に与える影響について(第1報) : 白鼠の諸器官と尿成分の変化
- 蛋白質欠乏時の動物の体蛋白質,とくにコラーゲンと筋肉蛋白質の代謝
- 「宇都宮高農」と農芸化学その1 : 宇都宮高農をたずねて