モルフィセプチンの活性型立体配座II
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概要
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薬物分子-受容体相互作用の段階に着目し,薬物分子が受容体と空間的に相補的な特定の3次元立体構造(活性型構造)をとり結合するとの仮定に基づき,前報と本報告で鎮痛性ペプチド分子モルフィセプチンの活性型構造推定について述べてきた. モルフィセプチンおよびその5種類の活性アナログ体の受容体(構造不明)との結合様式が類似であると仮定し,それら6種類のペプチド分子が共通にとりえ,かつ低エネルギーの2種類の3次元立体構造を見出したことを前報で報告した.それら2種類のいずれかの構造が活性型構造である可能性が高いと推察し,本報告ではモルフィセプチンと同一の受容体に結合する非ペプチド分子PETとの3次元立体構造の比較,検討から活性型構造を推定し,受容体と相互作用すると想定される特定の空間部位を推察した.また活性型推定構造と受容体との間の電荷分布の相補性を考慮して,活性型推定構造とPETの静電ポテンシャルの比較,検討を行った.さらに活性型推定構造の動的立体構造に関する知見を得る目的で,基準振動解析を用いることによって,受容体との推定相互作用部位の動的挙動を解析した. 前報,本報告でのモルフィセプチンの活性型構造推定の一連の解析は,一般に薬物分子の3次元立体構造に着目し,それに基づき,構造と薬理活性との関連を整理,解析し,新たに薬物分子を設計する-新たなドラッグデザインの方法の第一歩と考えている.今後,今まで述べてきた新たなドラッグデザインの手法とともに,すでに確立されている自由エネルギー変化の線型性に基づくHansch-藤田法等を適切に組み合わせて,実際に適用していくことも必要であろう.現在,受容体の構造解明も急速に進展しており,薬物分子-受容体相互作用に対して各種の分子科学計算手法と実験的解析手法を適切に伴せ用いることは,薬物分子の作用発現機構への理解をより深めると同時に薬物分子の設計に携わる人の直感をより触発する形で展開していくことが予想される.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文