トリアルキルスズ化合物のEscherichia coli JE 1011ならびにそのNS mutantsに対する作用

概要

論文の詳細を見る
トリアルキルスズ化合物のE. coli JE 1011とそのNS mutantsに対する抗菌作用を検討し,次の結果を得た. 1. TETは親株JE 1011に対しても, NS mutantsと同程度の抗菌力を示したが, TPTは親株に比べてNS mutantsに強い抗菌力を示し, TBTはNS mutantsに対してのみ強い抗菌力を発現した. 2. トリアルキルスズの水油分配係数を測定した結果, TET, 2.5;TPT, 22;TBT, 49と,アルキル基の炭素数が1個増えるごとに,急速に疎水的になることが観察された. 3. JE 1011をEDTA処理すると, LPSとタンパク質が短時間に同程度遊離してきた. このEDTA処理JE 1011に対するトリアルキルスズの作用を調べると, TETの場合, EDTA処理菌と未処理菌とでその感受性に変化はなかったが, TPT, TBTの場合, EDTA処理菌の感受性が増大した.とくにTBTでは, EDTA処理の影響が強く現われた. 4. 以上の結果とこれらの株のLPS構造から,トリアルキルスズのE. coli JE 1011とNS mutantsに対する抗菌作用において,疎水性の高いTPT, TBTに関しては, JE 1011の外膜構造が透過障壁として働くことが推測された.
社団法人日本農芸化学会の論文