ウシ肺臓カリクレインインヒビターの安定性について
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概要
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ウシ肺臓から抽出精製したカリクレインインヒビター(KI)を用いて,種々のpH,温度,酸,アルカリ,紫外線および圧に対する安定性を検討した結果, (1) 37°,2時間のインュべーションでは,pH 11以下およびpH 7.2,1時間のインキュペーションでは,90°C以下でいずれもきわめて安定であった. (2) 0.25 N塩酸中90°C,90分,0.1N塩酸中100°C,90分放置してもトリプシン阻害活性は全く変化せず,酸に対してきわめて安定であった. (3) 0.01 N水酸化ナトリウム溶液中500°C以下では活性の変化は認められなかったが,60°C以上では次第に活性の低下がみられた.25°Cでは,0.1 N水酸化チトリウム溶液中でも48時間は安定であった. (4) KI溶液に,室温で紫外線照射を行ならた場合,中性,酸性では活性の変化はみられなかったが,0.01N水酸化ナトリウム溶液中では徐々に失活する傾向がみられた. (5) KIの凍結乾燥品について,加圧実験から少なくとも5000kg/cm2の圧力では,活性の変化はみられなかった. (6) 塩酸加熱処理したKIのCDスペクトルならびに薄層クロマトグラムから,失活の過程において,まず三次構造になんらかの変化がおこり,ついで,加水分解によってアミノ酸やペプチド断片が生成するものと推定された.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文