米貯蔵時における脂質成分ならびに脂質加水分解酵素活性の変化
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概要
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玄米を低温(4°C),高温(40°C)高湿,高温(40°C)低湿の各条件下で貯蔵し,貯蔵中における脂質分解,これに関与する酵素の種類および酵素活性の変化を調べた. 貯蔵米における脂質分解は,低温より高温において,また低湿度より高湿度において反応が速く進んだ.ヌカ層では,非極性脂質より極性脂質が速く分解し,リン脂質が高い分解率を示した.胚乳部では同傾向がさらに強く現われ,非極性脂質がかなり安定であるのに対して,極性脂質とくにリン脂質は,最も速く分解した.貯蔵のいずれの条件においても,脂質の分解とともに遊離脂肪酸,リゾレシチンおよびリゾホスファチジルニタノールアミンが生成蓄積した.ステロール系糖脂質は,グリセロ糖脂質と異なり,貯蔵の中期から緩慢な分解に変わった. 玄米の脂質変化に関与する酵素としてリパーゼ,ガラクトリパーゼおよびホスホリパーゼの存在を確認し,その酵素活性比はそれぞれ100/64/9であることが分かった.リパーゼおよびガラクトリパーゼ活性の大部分はヌカ層に分布し,ホスホリパーゼはヌカ層と胚乳部の両組織に等しく分布していて,各脂質(基質)の組織内分布と,ほぼ対応していることを知った.さらに,玄米の各組織における酵素活性量と基質量との存在比を求め,これから推定される脂質変化と,上記貯蔵中の脂質変化とが,一部を除きほぼ一致していることを認めた.貯蔵米中,各酵素活性量は低下していくが,その減少傾向にはヌカ層と胚乳部において異なるものがみられた.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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