廃糖蜜によるL-グルタミン酸醗酵(第7報) : Polyoxyethylene fatty acid ester存在下におけるresting cellのL-グルタミン酸透過性とgrowing cellの脂肪酸組成との関係
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概要
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甜菜廃糖蜜でのM. ammoniaphilumによるL-GA菌体外著量蓄積の機構をL-GAの細胞膜透過性の面から検討した.各種POEFEおよび脂肪酸ソーダのresting cellにおけるL-GAのinfluxおよびeffluxに与える効果を検討した結果, POEFEとしてL-6が, NaFAとしてはラウリン酸ソーダが最もinflux量を小さくし,また, efflux量を最も大きくする効果が認められた.このことより炭素数12の脂肪酸およびそのエステルがresting cellにおける細胞膜透過性改善に対し,炭素数16または18の脂肪酸よりも顕著な効果をもっていることがわかった.一方,各種のPOEFEをそれぞれ添加した培養の結果, L-6, M-6の醗酵レべルでの効果はP-6, S-6のそれに比しはるかに劣っていることがわかった.このようなresting cellとgrowing cel1の結果が相反する事実を「取り込み」の面から検討するため構成脂肪酸を分析した.その結果, L-6, M-6添加培養において, L-6, M-6の脂肪酸部分であるC12およびC14脂肪酸は, P-6, S-6の場合に比し,かなり低い効率で菌体内へとりこまれるようであり,一方,飽和,不飽和脂肪酸モル比は約1で,無添加よりはかなり高いが, P-6, S-6の場合よりはかなり低く,またL-GAの蓄積も認められたが, L-GA著量蓄積するときのモル比が1以上であることを前報までに述べてきたにもかかわらず,蓄積不良であった.そこでlysozymeを作用させ菌体を分画し,その膜区分における構成脂肪酸と飽和,不飽和脂肪酸モル比をしらべたところC12, C14の膜区分存在量は少なく,そのモル比は1を下回っており,これによってL-GAの蓄積が不良であったものと推定した.しかしコントロール菌体の膜区分におけるモル比に比べると1に近く,またL-GAを少量ではあるが蓄積していることから, C12, C14脂肪酸がL-GA透過性改善に全く効果がなかったわけではなく, C16, C18に比し, C12, C14の膜区分へのとりこまれ方が少ない上に,さらに透過性改善への効果もいくぶん小さいと考えられる.以上より透過性に関与するものは主として炭素数16, 18の飽和,不飽和脂肪酸であることが推察される.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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