柑橘類のビタミンCに關する研究(第2報) : 合成l-アスコルビン酸並に果汁中ビタミンCの安定性に就て果汁製品のビタミンに關する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
(1) 柑橘類中の他の有效成分がビタミンCと如何なる化學的反應により如何なる作用を生ずるかに就て研究せんとす.先づ合成l-アスコルビン酸及び果汁中ビタミンCの其濃度,溶媒,温度の差異に對る安定性並びに重金屬,アスコルビン酸酸化酵素に依る酸化状態に關して實驗を行つた. (2) 種々の重金屬に依る合成l-アスコルビン酸溶液(25mg%)の酸化程度は銅イオンに依る場合最大にしてZnイオンは該實驗程度の濃度にては,かへつて酸化抑制作用を有する如くであつた。又銅イオン及びアスコルビン酸酸化酵素に依る酸化は少くも25mg/溶液(40±1°)の場合1時間以内は可逆性を有し自酸化の場合は7時間後にても未だ可逆的である. (3) 合成l-アスコルビン酸は固體の状態にて非常に安定にして7時間100±1°加熱にて殆んど減少を認められない. (4) 合成l-アスコルビン酸は溶液の状態にて,その安定度は濃度,溶媒,温度に左右され,濃度大なる程安定にして稀薄になるにつれて急速に不安定となる.又温度は低温である程安定度大である.溶媒は緩衝液(pH 3.3),再蒸溜水,蒸溜水,水道水の順で,水道水に依る不安定度は意外に大で榮養上注意を要する. (5) 温州蜜柑(靜岡縣産)果汁中ビタミンCの安定度は非常に高度のものにして酸化觸媒使用の場合に於てさへも40±1°,7時間放置にて殆んど損失認められず.100±1°,7時間にて約半分減少する。 (6) 温州蜜柑のアスコルビン酸酸化酵素力は極めて微弱の如くにして,その活力は70°附近2分間程度にて破壊される. (7) 温州蜜柑果汁に於て長時間高温(100±1°)加熱處理後のビタミンCの安定度は減退するが,80° 2分間程度の豫備加熱では,その差は殆んど認められない.故に果汁中ビタミンC酸化抑制物質が熱に對して非常に敏感であるとは考へられない.ビタミンC濃度が稀薄なれば長時間の保存に於ては當然加熱せざるものに比し損失は大となる.加熱後のビタミンC不安定度の増加原因は主としてビタミンCの存在状態が酸化に對して不安定となるためで,その他の原因として考へられるものは各種の酸化抑制物質の内,僅かのもののみ,全般的にか部分的に破壊されるために依るのであらう.この事實は各種果實,野菜加工品特に乾燥野菜,果實製品の需要の多い戰時下の現今,其等製造法に注意を要する點である. (8) 温州蜜柑果汁中ビタミンC安定度大なる原因の一としては生體内存在状態が特殊なるためなることを,合成l-アスコルビンC酸にて果汁中ビタミンCを置換せしめて實驗證明した. (9) 果汁透析部,非透析部に於ける酸化抑制能力の程度は非透析部稍劣るが全然皆無と言ふことはなく,兩部とも,多少の差はあるが,酸化抑制作用の役割を分擔してゐる.然し全果汁のそれと比較すれば勿論劣る.又透析後兩部を再び合したる場合の安定度は原果汁の安定度と近接するが存在状態,加熱操作等の原因により多少の差はある.兩部共酸素通過操作(48時間)にて安定度は僅かながら減退する.終りに御指導を賜りたる鈴木梅太郎先生,御援助並びに御助言を頂きし明糖研究所次長丹野恒治博士,理研櫻井芳人氏,Roche製l-アスコルビン酸結晶を御頒ち下されたる北研藤田秋治博士に厚く謝意を表する.又實驗を御手傳ひ下された成富晴子氏に感謝する.
論文 | ランダム
- CIMとTQC
- CIMと原価管理
- CIMと経営組織
- 18. Effects of 5-azadeoxycytidine on the ultrastructure of metaphase chromosomes(Abstracts of the 50th Annual Meeting of the Society of Chromosome Research)
- 2J20 大企業におけるビジネス機会の特定(Opportunity recognition)(技術戦略と事業戦略)