麦酒酵母の凝集形成に関する研究 (第3報) : 日本在來種(六条種)麦汁の主醗酵に際し麦酒酵母が早期異常に凝集を起す現象に就て
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概要
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1. 在来種麦汁の主醗酵に於て,ゴールデン種に比し酵母の凝集を早期異常に促進せしめ,Bllng.の切れをにぶらしめる特異性は,麦芽の糖化温度45〜60°所謂Eiweiss-Rastの期間には,余り大なる関係を有せず,60°以上の糖化温度が関係する. 2. 両種麦汁共最終煮沸(Abmaischen)を行わぬ場合,酵母の増殖乃至醗酵は良好にして,在来種にありては著しく其の特異性が消失する.即ちAbmaischの操作に特異性は大なる関係をもち,特異性発現因子が存在するとせば, 80°の如き高温でよく溶出されるものであるか,或はAbmaischenを行わぬ事は,酵素を麦汁中に残存せしめる事であり,酵素が二次的に培地又は酵母に好影響を与えるためかと考えられる. 3. 麦汁煮沸は忽布を添加せずとも,醗酵を阻害する傾向を示すが,在来種の特異性は変化しない.然しながら麦芽粕(Treber)を除かず煮沸を行いしものは,明らかに両種共,特異性を顕著に強化する.即ちTreberを高温で浸出する事が,在来種の特異性の発現に絶大な関係を有し,前項のAbmaischenの操作も, Treberが主役を演ずると考えられる.特異性発現因子が存在し, Treberを高温で浸出せしめると,よく溶出して来るものであり,煮沸によりても変化せす,又ゴールデン種の其れにも,この傾向を有するところから,在来種特有のものでない事も考えられる.而して在来種中には,ゴールデン種に比し,多量に特異性発現因子が含まれているか,質的に強力なものが存在するのではないかと云う推論に到達した. 4. 両種麦芽のHülseの単なる量的相違に原因せず,Mehl及びHülseに両種の本質的相違を感ぜしめる.即ち在来種の特異性は, Spelzen, Mehl共に其の原因となる如きである. 5. 在来種の特異性発現因子は,すでに大麦中に存在し,製麦過程(Mälzerei)に於て,其の程度が強化さるゝ如きである. 終りに臨み,終始御指導,御鞭撻を賜りし,東大坂口教授,当社顧問故湯川又夫博士,奥田譲博士に深甚なる謝意を表すと共に,研究の発表の自由を許可せられし当社浅見常務取締役に深謝す.尚実験に協力せられし石丸,中野両君に御礼申上げる.
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