史学を背景とした柑橘の分類地理
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概要
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柑橘の分類地理が多年停頓して進展しなかつた原因は LINNÉ, J. D. HOOKER, ENGLER, W. T. SWINGLEの如き超大家が種名を以て上位の taxen たる group 名に代用したことが第1であり,第2に先名権を無視して後名を見境もなく濫用したことが禍をなしている。第3に地理的背景を無視した鑑識の誤りが更に混乱を加えた,例えば欧州で発生したcultigenの名称を全然その産なき印度種に適用した多くの場合のように,現地の survey とともに史学的にも根拠のない誤謬が久しく通用したことである。第4に有効名称に対する詮索が浅く多くの有効種名が抹殺されて来たこと,並びに第5に性絡の判然しない種を濫造し,或はその価値判断を厳密に行なわないで早卒に採用し混乱を増したことなどが原因である。 これらの弊害を除去するためには第一に種の鑑識を完全に行ない, type concept に伴なう実在種を種単位として挙用し,上記5つの誤りを避けつつあらゆる単位の列挙を完成するとともに,別の仕事としてこれらの単位を種名を用いない上位 taxa によつて分類排列することを行なう。同時にそれら単位の地理的背景を明らかにし,分布移動の事実を現物採集に基づき且つ史学的に追究し,各 taxa の原生から第2次種形成に至る経路を明らかにし,以後一貫した:方針で各地の local flora を確立せしめるにある。 本論文は柑橘原生中枢たる印度東部境域(中心地 Assam)と古来重要性を過信せられて来た中国の種発生並びに種移動関係を究明することによつて柑橘分類地理学の真実を史学的背景を考慮に入れて明らかにせんと企てたものである。こと〓に至るまで著者の一貫した50年間の研究に俊つて柑橘原産論並びに進化論は解決の域に達したものと信ずる。
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