蔬菜の石灰栄養に関する研究 (第2報) : ハクサイの石灰欠乏症状ならびにその発生に及ぼす培養液組成および濃度の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
静岡県ほか2, 3の地方のハクサイ栽培で,石灰欠乏症ではないかと疑われる栄養障害がみられるので,ハクサイの石灰欠乏症状を確認し,また現地の障害が石灰欠乏によるとした場合,その同定および発症原因を知るための手がかりとして,石灰欠乏発症に及ぼす培養液の組成,濃度の影響を水耕によつて検討した。 1.ハクサイの石灰欠乏症状は,結球前外葉に現われる場合,先端周縁が水浸状,半透明気味となり,次いで急速に萎凋し額ぶち状に白色を呈して乾枯する。この症状は現地で「ふち腐れ」と呼ばれるものと同一であり,いずれも石灰塩の葉面散布で発症が抑えられる。従つてふち腐れは石灰欠乏症と判断される。 次に結球後球葉に現われる場合,側縁ないし先端周縁が水浸状,半透明気味となり,続いて飴色に変色し,多くの場合腐敗細菌の2次的寄生によつて軟腐状となる。現地にみられる「心腐れ」がこれに相当し,症状の類似性,分析結果,発生条件の考察などから,ほぼ石灰欠乏と判定される。 2.石灰欠乏症は,培地の石灰濃度を低めることによつても,また培養液の塩類濃度を,石灰をも含めて,高めることによつても容易に発生し,特に窒素源の一部にNH4-Nを含む場合に著しい。 またハクサイは石灰欠乏を起し易い作物であり,特に完熟期には発症し易いようで,この時期にはNO3-Nのみを窒素源とする標準培養液でも軽度の症状がみられた。 3.石灰含有率は下位葉に高く,上位葉では急激に低下する。また培地の石灰濃度を低めることによつては勿論,培養液の塩類濃度を高める場合にも一石灰濃度も同率に高めているに拘らず一石灰の吸収は著しく減少し,かつ窒素源にNH4-Nを含む場合に特に減少が著しい。 なお塩類濃度の上昇に伴ない苦土の吸収は石灰と同じ傾向を示すが,苦土欠の症状はみられず,加里の吸収は著しい影響を受けない。 4.石灰欠発症葉あるいは症状を示す部分の石灰含有率は対照に比して常に低く,窒素含有率は概ね高くなつている。ただし心腐れの発生し易い球葉では,石灰含有率が元来低く,加えて,葉柄を含めて分析に供する場合は,症状が認められる場合においても,その低下は小さく現われるので,石灰含有率をもつて症状を同定し,あるいは発症の指標として用いる場合は,試料を葉身あるいは発症部位のみに限り,かつ,対照を適正にとることが必要であり,さらに窒素との当量比を求めてみるのも一法である。 なお石灰欠乏症状の特異性と発症の機作について若干の考察を加えた。
著者
関連論文
- 蔬菜の石灰栄養に関する研究 (第2報) : ハクサイの石灰欠乏症状ならびにその発生に及ぼす培養液組成および濃度の影響
- 富士市における秋播早生カンラン生産の推移と所謂心腐れ症の発生について : 蔬菜産地における土壌の生産力低下の1例として(第3報)
- 富士市にみられる甘藍跡玉葱の生育障害について : 蔬菜産地における土壌の生産力低下の1例として(第2報)
- 富士市にみられる甘藍跡玉葱の生育障害について,蔬菜産地における土壌の生産力低下の1例として(第1報)