温州ミカンに対する燐酸質肥料の影響について(第2報) : 夏肥として成木に施された燐酸の行動
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概要
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1. 32Pで標識した過燐酸石灰(470μc/g P2O5) 79.76g を製造し, 7月16日に夏肥として19年生普通温州に施用し, これを11月20日の収穫期に掘取り解体して分析し, 燐酸の吸収およびその体内の分布状態を調べた。2. 分析の結果, 樹体各部では施肥燐は全燐に対し, 103 order でしか存在しなかつた。このような低濃度では夏肥の施肥燐が著しい生理効果を発現しているとけ考えられない。2. 葉および細根の施肥燐の含有率は割合高いが, 果実, 幹, 太根の部分は低い。4. 夏肥から収穫期までの間の施肥燐の吸収量は38mgで, 果実の吸収した燐酸量は5gであるので, 施肥燐と同時に吸収される相当多量の土壌燐を考慮に入れなければ収支を相償わせることが困難である。なおこの点についてはさらに研究を進めたい。またこの間における夏肥過燐酸石灰中の燐酸の利用率は0.5%であつた。5. 夏肥過燐酸石灰の土壌中における行動は, 全燐, ク溶態燐ともに上層ほど多く, 下層に行くにしたがつて少なくなつている。表層から9cmまでの土壌中の残存量は約27%で非常に低い値であつた。9cm以下の層には施肥燐は検出感度以下の濃度に分散されたということであるから, 全土壌中の施肥燐の残存量は27%より多少多いものと思われる。土壌中燐酸残存量が予想外に少ない理由は浸蝕により流去されたものでない。土壌中の施肥燐が土壌の種類によつてげ必ずしも不溶解化していないこと, 土壌燐が過去の施肥量から計算して多くないことなどからして供試土壌では燐酸は溶脱の傾向にあると考えられる。著者らは供試土壌のみでなく燐酸の溶脱現象はミカン園十壌ではある程度普遍的に起こるものと考えているが, 将来の実験により確かめたい。6. 永年作物の肥料試験は樹令の要因を無視できないが, これは樹令の増大に伴う生理機能, 養分吸収能の低下などのほかに, 大量の既存要素による吸収要素の物理的な稀釈度が樹令によつて著しく相違することを考慮に入れなければならない。したがつて産業的に対象となる成木に対し幼木の肥料試験成績は直ちに適用し難いものと考えられる。
- 園芸学会の論文
著者
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石田 隆
静岡県柑橘試験場
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中間 和光
静岡県柑橘試験場
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小池 章
静岡県柑橘試験場
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西垣 晋
農林省農業技術研究所
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渋谷 政夫
農林省農業技術研究所
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小山 雄生
農林省農業技術研究所
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花岡 郁子
農林省農業技術研究所
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