チューリップの窒素栄養に関する研究 (第1報) : 窒素供給時期が3要素の吸収と生育収量に及ぼす影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
チューリップの生育, 収量に及ぼす窒素供給の時期的影響をみるため, 品種 William Pitt の11.0g球を用い, 5つに分けた各生育期に窒素を与えたり与えなかつたりして砂耕し, その結果から最も有効な窒素供給時期を考察した。生育期は, I. 根系発達期 (11月1日〜3月14日), II. 萠芽期 (3月15日〜4月19日), III. 茎葉生育期 (4月20日〜5月4日, 開花期), IV. 球根肥大期 (5月5日〜5月31日), V. 球根充実期 (6月1日〜6月24日) とした。1. 茎葉の生育は, 窒素欠乏によつていちじるしい影響をうけ, 窒素を与えないと, 茎葉, 花ともに小さく, 葉色は黄緑色となるが, 開花は逆に早まつた。生育期のうちでは, IIにおける影響が最も大きい。2. 枯れ上がりは, IVに窒素を切ると早まり, 与えるとおくれ, これ以前, あるいは以後の窒素供給はあまり影響しない。3. 球根収量に対しては, 前期の窒素供給が大きく影響し, 生育期のうちではIIにおける窒素の効果が最も大きく, IIIがこれに次ぎ, IV 以後における影響は, これらに比べるとずつと小さい。また窒素欠乏による収量減少は, 主球よりも子球に強くあらわれる。4. 収穫時の茎葉重量の大きいものは, 一般に球根収量も大きい。5. 球根の窒素含有率は, 後期の窒素欠除によつていちじるしく減少し, IVにおける窒素供給の影響が最も大きく, IIIがこれに次ぎ, その他の時期における窒素の影響はほとんどない。6. 収穫時の茎葉の窒素含有率は, 球根のそれと同様な傾向を示し, 両者の間に強い正の相関があつた。ただし, 開花期以前に窒素が欠乏したものは, IVになつて窒素を供給しても, 球根の場合と異なり, 茎葉の窒素含有率はほとんど増さない。7. 燐酸含有率は, 球根, 茎葉, 花ともに窒素含有率との間に正の相関があつた。ただし, 窒素欠乏のいちじるしい場合には, 燐酸含有率は窒素含有率ほど低くならない。8. 植物体各部の加里含有率は, 処理間にあまり差がなく, また窒素含有率との間にも一定の関係がみられなかつた。9. 収穫球の花芽分化は, 窒素欠乏のいちじるしいときに, はなはだしくおくれたが, 一般に球根収量や窒素含有率との間に明瞭な関係はなく, I, IIなど生育初期に窒素が欠除するとおくれる傾向がみられた。10. 収穫球の外皮直下のりん片表面に, 原因不明の褐色のえそ状病はんを生じたものがあつた。開花期以前に窒素欠除して欠乏症状の出たものに, それ以後に窒素を与えた場合, 100%発病し, 病害の程度もひどかつたところから, 生理的性質の障害と考えられた。11. これらの5つの生育期における窒素の生産能率は, 早い時期ほど高く, IV以後では非常に低い。一方窒素の吸収量はII, III, IVなどの時期において大きいので, IIおよびIIIの時期がチューリップにおける窒素施肥の中心となる時期として重要であると考えられた。
著者
関連論文
- チューリップの「花飛ばし」高温処理に関する研究(第2報) : 花芽阻害の経過及びその程度と球根収量との関係について
- 輸出チューリップの開花促進に関する研究(第3報) : 低温処理済球根の輸送日数及び輸送温度が開花促進に及ぼす影響に就いて
- 輸出チューリップの開花促進に関する研究(第1報) : 球根の低温処理温度並びに期間が開花促進に及ぼす影響に就いて
- チューリップのドロッパー形成におよぼす種球根貯蔵温度の影響
- チューリップの窒素栄養に関する研究 (第1報) : 窒素供給時期が3要素の吸収と生育収量に及ぼす影響