カンキツにおけるマンガン欠乏に関する研究 (第2報) : マンガン欠乏が温州ミカンの結果母枝の生長, 母枝からの新稍の発生, 着花および果実の品質に及ぼす影響
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概要
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1. 温州ミカンにおけるマンガン欠乏が, 樹の生長, 着花, 果実の発育•品質ならびに貯蔵性におよぼす影響を明らかにしようとした。まず, 神奈川農試根府川柑橘試験地に植えられた16年生の辻村系普通温州樹 (カラタチ台) に, マンガン欠乏による顕著なクロローシスがみられたので, そのようなマンガン欠乏樹 (9月における葉内Mn含量15ppm) を健全樹 (同じく25ppm) と区別し, それらの樹における結果母枝の翌春までの発育状態, ならびに, それらの母枝からの新梢の発生および着花の状態を比較した。2. 1957年4月に, マンガン欠乏葉をつけた結果母枝 (マンガン欠乏の徴候は前年7月ごろに発生) と健全な母枝について, それらの先端と基部における太さ, 長さ, 重さ, 節間長などを比較したが, 両者の間にはいずれも差がみられなかつた。さらに, 5月にこれらの母枝から発育した総新梢数, 不着花新梢数, 総花数, じき花数などを比較調査したところ, 総新梢数および不着花新梢数は, 欠乏枝が健全枝より少ない傾向にあつたが, 総花数およびじき花数は, 欠乏枝の方が健全枝より多い傾向にあつた。3. さらに東大二宮付属果樹園に栽植中の17年生尾張系普通温州樹を供試し, マンガン欠乏を呈する樹16樹を, 無処理区, マンガン肥料の土壌施用区, 硫酸マンガンの葉面散布区, 土壌施用+葉面散布区の4区に分けて, 翌年の新梢の発生と着花状態を比較した。その結果総新梢数と有梢花数については, 処理の影響はみられなかつたが, 総花数とじき花数は処理によつて減少した。4. このように, マンガン欠乏によつて, 温州ミカンの着花数が増加するのは, 主として, じき花数の増加によるものであり, 健全な状態では, 休眠芽となる芽がじき花として萠芽したものと考えられた。5. 上記2つの試験地におけるマンガン欠乏樹と健全樹から生産された果実について, 品質および貯臓性を比較した。その結果, 果実の硬度と全可溶性固形物含量については, 欠乏樹産果の方が, 健全樹またはマンガン処理樹の産果より高い傾向がみられたが, そのほかの要因については, はつきりした傾向はつかめなかつた。
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