ハッサクの低温貯蔵に関する研究 (第1報) : 温湿度条件と虎斑病の発現および防止について
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概要
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低温貯蔵におけるハッサクの虎斑病発生と温湿度条件との関係, およびその防止法について試験した。1. 12月に採収して5°C程度の低温に貯蔵したハッサクは, 常温貯蔵のそれに比べ庫内での虎斑病の発生はきわめて少ないが, 3〜5月に出庫すると著しく発病し, 出庫時期別では3月よりも4月に多い傾向がみられた。2. 出庫時期がおそくとも, 出庫後に気温の低いときには発病が少なく, 12月に採収直後の果実や, 1月に出庫した場合でも, 25°Cに加温すると多くの発病がみられる。3. 5°Cの低温貯蔵果を, 5°C, 15°C, 25°Cおよびそれぞれに多湿, 少湿を組合せた温湿度条件のところに出庫すると, 虎斑病の発生は温度ときわめて高い関連性をもち, また同一温度では多湿区より少湿区のほうが発病果率の高い傾向を示した。本試験の範囲では温度が高くて, 湿度の低い場合に発病が促進される事実を認めた。4. 低温貯蔵果を出庫前4日間, 10°C, 15°C, 20°Cの温度に移し, 外気温との差を少なくして出庫したところ, 虎斑病防止には効果がなかつたが, 出庫5日前から貯蔵温度を1日1°Cずつ上昇させ10°Cとしてから出庫すると明らかに発病を少なくすることができた。しかし出庫後の温度条件によつては必ずしも効果のみられないこともあつた。5. 以上のことから虎斑病の発生は貯蔵期間の長短による影響よりも, 貯蔵時の果実温と出庫後の外気温の温度較差の大きいことが関係するのではないかと考えられる。6. 低温貯蔵果を出庫時にポリエチレン袋詰, O. E. D5%液浸漬, メトローズ0.5%液浸漬, ワックス処理(塗布), ストップスコールド0.2%液浸漬, アクリル樹脂処理 (原液塗布) などの処理を行なつて虎斑病防止効果を試験したところ, ワックス処理, およびアクリル樹脂処理は発病を少なくする効果がみられ, その症状程度も軽くなり, 実用的価値があると考えられた。