エンドウの分枝性に関する研究 (第6報) : 分枝の発生に関連する生理学的, 解剖学的変化について
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概要
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エンドウの分枝発生に関連し, 主として幼植物を用いて2, 3の生理学的および解剖学的実験を行なつた。結果をとりまとめると次のようになる。(1) 摘心した幼植物の頂部にIAAやGAのラノリン•ペースト (0.01%および0.1%) を与えた場合, IAAは従来の実験結果どおり側芽の伸長を完全に抑えたのに対し, GAはそれを著しく促進した。またGAとIAAとを同時に与えるとIAAの側芽伸長抑制は弱められる。(2) 摘心しない植物の頂部にGA (0.1%および1.0%) を与えると, 主枝の伸長はさかんになるが側芽は伸びてこない。TIBA(0.1%)を与えると, 主枝の伸長には影響を与えないが側芽はさかんに伸びだしてくる。(3) IAAおよびGA (いずれも0.1%)を無摘心の植物の側芽の基部に直接与えると, GAは主枝の伸長には大きな促進力を示すが側芽そのものの伸長をひきおこさない。一方, IAAは主枝の伸長に大きな影響を与えないが側芽を若干伸長させる。(4) これらのことから, 側芽の伸長にはIAAが大きな関係をもつており, 主枝中でのIAAの生産の低下または転流の抑制が側芽の伸長を促がすこと, しかし, 側芽でのIAAの増加はその伸長を抑制せず, むしろ促進することがうかがわれる。(5) 外部要因が体内のIAAの消長に与える影響を追求した。その結果, 短日下およびTIBA処理によつて拡散オーキシンの量は著しく低下した。しかし遮光によるオーキシン含量の変化はみられなかつた。(6) リンの放射性同位元素を根から吸収させ, 長日高温, 短日低夜温およびTIBA処理による体内のリン酸の分布の様相を調査した。その結果, 長日高温下ではリン酸は主枝の上部にゆくにつれて急激に増加している。これに対し, 短日低夜温下およびTIBAを処理した場合では主枝の基部に多くのリン酸が集積し, 上方向へのリン酸の移動はゆるやかであつた。またこれらの様相は側芽の伸長開始よりもかなり以前に生起した。かなり大きくなつた植物を用い, 高温下で長日および短日処理を行ないつつ根から放射性のリンを与えた。放射性のリン酸はこのような外部要因のもとでは主枝の頂部から高節位分枝の発生する節間にかけて大量に集積し, それ以下の節間には非常に少なかつた。この実験ではその後短日下および長日下のすべての植物において多くの高節位分枝が発生した。(7) 側芽の伸長に関連する内部構造の変化を追求するため, 幼植物を摘心すると同時に体内の維管束系の変化を24hごとに調査した。摘心後24h以内に側芽に通ずる維管束が急激に発達するのがみられた。それにつづく24hのあいだにそれはさらに発達をつづけ, 側芽も約8mm伸長した。(8) 以上のことをとりまとめ, エンドウにおける分枝の発生について一つの作業仮説を提出した。すなわち日長, 温度などという外部要因やGA, TIBAのような生長調節物質はすべてまず体内のオーキシン含量に変化を与え, ついでこの変化は体内の養分の配分に変化をひきおこす。そして主枝中の養分が集積する部位にある側芽はその養分を利用して伸長をはじめると考える。たとえば長日高温下では主枝の頂芽部でのオーキシン生産がさかんになり, 養分もそこに多く移動し, この付近の側芽が伸長して高節位分枝を形成する。短日冷温下では頂芽部でのオーキシン生産が低下して養分も主枝の下部に停滞するので, この付近の側芽が伸長して低節位分枝を形成する。そしてこのいずれの場合でも, 養分がある側芽に利用可能となると側芽頂部でのオーキシン生産がさかんになり, そこへの維管束の形成もさかんとなり, 側芽の生長は加速度的に促がされると考えるのである。
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