カンキツにおけるマンガン乏に関する研究 (第6報) : 新葉の緑化完了期におけるマンガン含量を左右する要因について-2
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概要
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1. 比較的に土壌のMn供給能が低い所に栽培されている温州ミカン樹の緑化完了期における新葉のMn含量は, 培地のMn供給能, 新葉の旧生部に対する割合, 新葉の緑化完了期まで働く細根の量などによつて左右されるのではないかという前報までの推察を確かめるため実験を行なつた.2. 温室内で前年の11月から水耕条件下で育成したカラタチ台の1年生普通温州「藤中」24樹を供試した. 腋芽が萠芽直前となつた1967年5月下旬, 4区に分け, 4区中の2区は植物体の旧葉を全部摘除した摘葉区とし, 残りの2区は旧葉を摘除しない対照区とした. また, 各区中の1区にMnを加え, 他の区にはMnを加えなかつた. 7月中旬に植物体を収穫し, 各器官に分けて乾物重, Mn含量を測定した.3. 旧葉を摘除した区と対照区とで, 新葉の発生数には差がみられなかつたが, 1葉当たり乾物重が旧葉摘除区でひじように小さく, したがつて, 1樹当たりの新葉乾物重は, 対照区に比べ, 摘葉区でひじように少なかつた.4. 両Mn処理区とも, 摘葉処理区は対照区より新葉のMn含量が高く, -Mn処理では, 摘葉処理間の差が1%レベルで有意であつた.5. -Mn処理では, 細根を除いて対照区の方が摘葉処理区より, 処理開始後に生成された新梢も処理開始前までに生成された各器官のMn濃度も低かつたが, +Mn処理では, 両摘葉処理間でほとんどの器官のMn濃度に差がみられなかつた.6. 各器官のMn絶対量は, -Mn処理では新梢葉, 細根を除いて, 対照区が摘葉処理区より少なかつた. +Mn処理ではほとんどの器官で, 対照区の方が摘葉処理区より多かつた.7. 以上の結果から, 緑化完了期における新葉のMn含量は, この新葉が発生するまでに, 樹体が吸収蓄積したMnと, 旧生部に対する新生部 (ここではとくに新葉) の割合, 新葉の緑化期間中働いている細根量と培地のMn供給能とからきめられると考えられる. したがつて, 前報までのほ場における温州ミカン樹のMn欠乏の発現を左右する要因に対する推察は, この実験からも, ある程度確かめられた.
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