制御環境下における温州ミカン果実の生長反応 : III. 秋季における昼夜温度日較差が果実の発育ならびに着色•品質に及ぼす影響
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概要
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3年生杉山系温州ミカンを供試し, 秋季 (果実発育第3期) における昼夜温度日較差が, 果実発育•着色•品質に及ぼす影響を調べ, 良品質果実生産に対する昼夜温度日較差の必要性について検討した. 温度処理は日較差が0°C, 10°C, 20°Cと異なるが, 各区とも日平均温度が18°Cになるような条件下で行なわれた.1. 日較差0°C (18-8°C) と10°C (23-13°C) 区における果実の発育は, 生長増加量, 生長相とも同じ傾向を示した. 日較差20°C (28-8°C) 区における果実発育は第3期前半では悪かつたが, 後半になつても肥大生長が継続し, 最終的に最大果となつた. 昼夜温度日較差のあることが, 常に果実の肥大生長率を良くし, 秋季における果実発育にとつて有利であると言う傾向は認められなかつた.浮皮果の出現は日較差の少ない条件下で多く認められたが, 夜温との関係が密接であると考えられた. 果皮率は日較差20°C区においてもつとも少なく, 果肉歩合の高い果実となつた.2. 果実の着色進行は日平均温度が同じであつても, 日較差によつて遅速が認められ, 日較差が少ないほど着色が早かつた. 日較差20°C (28-8°C) 区では完全着色が認められなかつた. 着色は秋季の日最低気温のみと関係するのではなく, 昼温の日最高気温にも強く影響され, 高昼温区ほど着色の抑制は著しかつた. 果実着色の色調も日較差が少ない区ほどオレンジ色の出現が早く, 赤味も濃かつた. 着色促進に好適な温度範囲が昼温および夜温それぞれに存在すると考えられ, 日較差の存在が着色を促進すると言う傾向は認められなかつた.3. 果汁中の遊離酸および糖含量は, 日平均温度が同じであつても, 日較差の大小によつて異なつた.遊離酸含量は日較差の少ない条件ほど早くから低くなつたが, 日較差自体の関係よりむしろ夜温によつて強く影響を受けることが認められ, 高夜温ほど酸含量は低かつた.糖含量は日較差0°C (18-18°C) と10°C (23-13°C)の両区で高く, 日較差20°C (28-8°C) 区では極端に低かつた. 着色と同様に, 果実への糖の集積を良くする好適な温度範囲が昼温•夜温それぞれに存在することが考えられ, 日較差の大きいことが果実の糖含量を高めると言う傾向は認められなかつた.甘味比は秋季の昼夜温度の日較差が大きいほど低く, 果実品質が悪くなる傾向が認められた. 良品質果実の生産には,必ずしも温度日較差の存在する必要はなかつた.