トマトの1段密植栽培に関する研究 : (第1報)は種期別の生育, 収量について
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概要
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この研究は, 施設トマトの高能率な生産方式であると考えられる1段密植栽培による周年生産方式のは種期別の生育, 収量を明らかにする目的でおこなった.1. FTVNR-3と段飛ヨーズの2品種を用い, 1974年7月から1975年3月まで1か月間隔で, 毎月の10日に計9回は種した. 栽植本数は10aあたり11,000本で, 第1花房上3葉を残して摘心した.2. は種から収穫までの所要日数は9月, 10月, 11月, 12月まきは約170〜188日, 8月, 1月, 2月まきは約140〜155日, 3月, 7月まきは約120日であった.定植から収穫までの所要日数は9月, 10月まきで120日, 8月, 11月, 12月まきで85〜100日, 7月, 1月, 2月, 3月まきでは65〜75日であった.3. 葉長, 葉幅は主に温度の影響を強く受け, 栽培時期によって異なった. 特に第1花房下の茎の長さは育苗期間の温度条件によって決定され, 11月, 12月, 1月まきでは他のは種期におけるよりも短くなった.4. 収量は10月まきのFTVNR-3と9月まきの段飛ヨーズを除いて, 各は種期とも10aあたり7t以上が確保され, 大果割合は, 10月まきのFTVNR-3を除いて, 両品種とも85%と高かった. 段飛ヨーズは年間を通じて安定した収量を示し, この栽培方式に適しているものと認められた.5. 各作の栽培全期間の1日平均日射量と総収量との間にr=0.758(p<0.05), 良品収量との間にr=0.774(p<0.02) の相関がみられた. また開花後30日間の1日平均日射量と総収量との間にはr=0.906(p<0.001), 良品収量との間にはr=0.923(p<0.001)という高い相関が認められた.6. 開花直前の苗で定植すれば, 定植後の期間が短縮され, 年間4作で10aあたり30t, 本葉5〜6葉期に定植すれば, 年間3〜3.5作で25t前後の収量が得られる.7. トマトの1段密植栽培は苗の大量供給方法が確立されればトマト栽培農家にとって有利な栽培法であると考えられる. その理由としては, 年間の生産量は他の栽培法と変らず品質も良いこと, 収穫花房を1〜2花房に限定しているため, 花房の生育段階別に果実生産に最も適した環境条件が与えられ, その管理も単純化されること, 支柱の簡易化と誘引の省力化ができること, 年間で価格のよい時期に集中的に出荷でき, また, 年間の労働力に応じた弾力性のある作付計画が可能であることなどがあげられる.