ブドウ‘甲州’における味なし果と健全果の経時的成分変化について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
‘甲州’ブドウの昭和55年の味なし果と健全果について, 果実の粒径及び粒重と, 主要成分である糖と酸の経時的変化を調べて, 次の結果を得た.1. 味なし果の粒径と粒重の増加曲線は成熟過程中, 健全果とほとんど同じ形を示した. ただし, 味なし果の方が粒径, 粒重ともに終始わずかに大きい値を示した.2. 味なし果の糖度は9月初めの着色の時期までは健全果と全く同じ上昇を示したが, その後は上昇が止った. 健全果はその後も順調な上昇を示し, 収穫期には18〜19%まで上昇し, 味なし果との差は6〜7%に達した.3. pH の変化については, 味なし果はゆっくりとした直線的な上昇傾向を示したが, 健全果は典型的なS字曲線を示した.4. 還元糖は幼緑果期を除けば上記糖度の場合と同様であった.5. 滴定酸度は8月上旬に味なし果で5.00g/100ml, 健全果で5.15g/100mlの最高に達し, 以後急減して, 収穫期には逆転し, 味なし果0.95g/100ml, 健全果0.86g/100mlとなった.6. ブドウ糖と果糖の総量の変化は還元糖の場合と同様であったが, 収穫期に味なし果ではブドウ糖5.2%, 果糖5.7%, 健全果ではブドウ糖8.4%, 果糖9.4%となった. また, G/F値は成熟初期は1で, 9月初めになって1を割り, 収穫期に味なし果で0.92, 健全果で0.89となった.7. 酒石酸とリンゴ酸の総量の変化は滴定酸度の変化と同様であったが, 成熟初期では酒石酸よりもリンゴ酸が多く, 両酸とも味なし果の方が健全果よりも少なかった. しかし, 収穫期にはリンゴ酸よりも酒石酸が多く, 味なし果では健全果よりわずかにリンゴ酸が多く, 酒石酸は少なかった. また, 結合型の酸の割合を計算し, 味なし果で17.4%, 健全果で24.6%の値を得た.‘甲州’の味なし果樹の外見的生育経過と収穫量は健全果樹とほとんど違いはなく, 強いて言えば, 味なし果実の方がわずかに着色が劣る程度であった. しかし, 成分的には味なし果の言葉が示すとおり, 糖分が極端に低く, 酸が高く, ‘水っぽい’ものであって, この変化は着色の始まる9月になって突然に起こるものである.
- 園芸学会の論文
著者
-
櫛田 忠衛
山梨大学工学部醗酵研究所
-
山川 祥秀
山梨大学工学部附属発酵化学研究施設
-
山川 祥秀
山梨大学工学部
-
清水 均
山梨大学工学部附属発酵化学研究施設
-
櫛田 忠衛
山梨大学工学部発酵化学研究施設
関連論文
- 脱脂大豆蛋白を添加した白ブドウ酒の試醸
- 'シャルドネ'の系統選抜について
- 交雑新品種・赤ワイン用ぶどう'ヤマ・セミヨン'(山ブドウ×セミヨン)の品種特性について
- 水, エタノールのγ線照射分解生成物による甲州ワイン中の油状褐変物質の褪色 : 日本産ブドウとワインの色調と呈味成分に関する化学的研究(第5報)
- ブドウ酒中の褐変物質に対するγ線照射の影響
- 山梨県産1996年甲州種ヌーボーワインの化学分析値について
- 日本産ブドウとワイン中の遊離アミノ酸とペプチド : 日本産ブドウとワインの色調と呈味成分に関する化学的研究(第3報)
- 甲州種白ワインのペプチドの分離とその構造 : 日本産ブドウとワインの色調と呈味成分に関する化学的研究(第4報)
- Streptomyces yatsugatakensis to Gliocladium virensの生産する酵母細胞壁溶解酵素の諸性質 : 微生物の生産する酵素による酵母細胞壁の溶解に関する研究
- 日本のワイン用ブドウ'ヤマ ソービニオン'の育種
- ブドウ"巨峰"の無核化に及ぼすジベレリン処理時期の影響
- ワイン用ブドウ"カベルネ・ソービニオン"の垣根仕立て栽培における主枝の長さと一株当たりの結実量がマスト成分とワインの品質に及ぼす影響
- ブドウ樹の生長点培養
- 山ブドウの経時的成分変化
- ブドウの収穫時期とワインの品質
- Agrobacterium rhizogenesを用いた直接不定芽形成によるキウイフルーツの形質転換
- ワイン用としての"甲州"の系統選抜
- ぶどう酒酵母と野生酵母のりんご酸分解能
- 交雑新品種・赤ワイン用ぶどう"ヤマ・メルロー"の品種特性について
- 新品種・赤ワイン用ぶどう「ヤマ・ソービニオン」の品種登録
- 交雑新品種・赤ワイン用ぶどう"ヤマ・ソービニオン"の品種特性について
- Cladosporium cladosporioides No. 9洗浄菌体によるisoamyl alcoholからisoamyl acetateの生成(その2) : エステル酸部の由来
- Cladosporium cladosporioides No. 9洗浄菌体によるisoamyl alcoholから isoamyl acetateの生成(その1) : エステル生成条件とisoamyl alcohol-U-14Cを用いた場合の14C分布
- Cladosporium cladosporioides No. 9によるアミノ酸からアルコールと酢酸エステルの生成について
- Cladosporium cladosporioides No. 9の生産する中性部香気成分について
- Cladosporium cladosporioides No. 9洗浄菌体によるL-leucineからisoamyl alcoholとisoamyl acetateの生成について
- 芳香生産性Cladosporium属菌の分類同定
- 芳香生産性Geotrichum属菌の分類同定
- ワイン用ぶどうとしての'甲州'の系統選抜
- 新品種・白ワイン用ぶどう「ヤマ・ブラン」の品種登録
- ウイルスフリ-ぶどう樹"メルロ-"の低糖度果汁現象について
- ウイルスフリーのブドウ‘カベルネ•フラン’における果汁成分の経時的変化について
- シルバ-ネルの収獲時期とワインの品質
- シャルドンネの「かもし」醸造試験ノ-ト
- 醸造用ブドウの果粒の成長と主要成分の消長-1-
- ブドウ及びブドウ酒中の有機酸に関する研究 : (第3報) 皮仕込ブドウ酒の有機酸について
- ワイン用原料ブドウ‘セイベル9110’,‘セイベル13053’, ‘セイベル8745’の品種特性について
- 加熱ブドウ酒中の褐変物質の分離精製
- ブドウ‘甲州’における味なし果と健全果の経時的成分変化について
- 白ワイン用原料ブドウ‘セミヨン’‘シルバーナー’ ‘サントリー•ブラン’の品種特性について
- 白ワイン用原料ブドウ‘リースリング’, ‘シャルドンネ’, ‘甲州’, ‘リースリング•リヨン’の品種特性について
- 赤ワイン用原料ブドウ‘カベルネ•ソービニオン’‘ピノ•ノワール’‘マスカット•ベリーA’‘カベルネ•サントリー’の品種特性について
- 'シャルドネ'の垣根仕立て栽培における主枝の長さ, 1株当たりの結実量がマストとワインの品質に及ぼす影響
- 'シャルドネ'の垣根仕立てI, Y, U型がマスト成分およびワインの品質に及ぼす影響
- 平成8年度試験醸造報告
- 山梨県産1995年甲州ヌーボーワインの化学分析値について
- オリゴ糖を添加したキウイフルーツジュースから製造したワインの特徴
- '甲州''カベルネ・ソービニオン'の垣根および棚仕立て裁培がマストとワインの品質に及ぼす影響
- 山梨県産1991〜1994年甲州種ヌーボーワインの化学分析値について
- ウイルスフリーぶどう樹‘カベルネ•ソービニオン’及び‘カベルネ•フラン’のウイルス再感染について
- ブドウ‘シャルドンネ’及び‘カベルネ•ソービニオン’のウイルスフリー樹と汚染樹における果汁成分の経時的変化について
- Cladosporium cladosporioides No. 9無細胞抽出液による酢酸とisoamyl alcoholからのlsoamyal cetateの生成