キュウリ品種とクロダネカボチャの生育, 無機栄養に及ぼす根温の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
作物根は養水分吸収のほかに種々の重要な機能を有しているが, これらの機能が作物の生育, ことに不良環境に対する感受性にどのように関与しているかを明らかにすることが重要な課題である. 本研究においては作物根の機能に関する環境生理学的研究の一環として,春系キュウリの‘久留米落合H型’, 夏系キュウリの‘四葉’, クロダネカボチャ及びクロダネカボチャに接ぎ木した‘四葉’の4種の作物の生育と無機栄養に及ぼす根温の影響を比較検討するために, 第2本葉の展開した植物体を人工光下で, 12, 14, 17, 20, 25, 30°Cの根温下で10日間水耕栽培した. その結果, ‘四葉’は低根温による生育低下が著しく, その低温限界温度は‘久留米落合H型’に比べて2-3°C高いこと, クロダネカボチャは低根温耐性が高く, またクロダネカボチャに接ぎ木した‘四葉’は低根温耐性が著しく高められることが認められた. これらの作物の種類あるいは品種による低根温耐性の違いは低根温下での根の生長量の違いを反映しており, キュウリ2品種, ことに‘四葉’においては14°C以下の低根温下で根の生長が著しく阻害されたのに対し, クロダネカボチャでは12°Cまで低温ほど促進された. 接ぎ木‘四葉’も14°Cまで低根温ほど根の生長が促進された. その結果, T/R比はクロダネカボチャでは根温の低下に伴って減少したのに対し, キュウリ2品種では14°C以下になると T/R 比が増大に転じた. 葉の養分含有率はキュウリでは低根温で著しく減少したのに対し, クロダネカボチャではほとんど影響されず, 接ぎ木‘四葉’においても低根温の影響が自根のものに比べて小さかった. 各養素についてみると, P とMnがもっとも著しい影響を受け, 一方 Fe とMgはその影響が比較的小さかった. 低根温による生育の阻害程度と各養素の葉中含有率の減少程度の間に, Bを除いて, 有意な正の相関が認められた. 葉の含水率も低根温によって減少したが, この傾向は低根温耐性の小さな‘四葉’においてとくに顕著であった. 低根温下において, 根温処理後に展開した葉に葉脈間クロロシスが発生したが, この発生程度は‘四葉’でとくに著しかった.以上の結果から, 低根温下での根の生長阻害程度が作物の低根温耐性の重大な決定因子の一つであり, それとともに根の養水分吸収を含む諸機能の低根温に対する感受性が作物の低根温耐性に関係していると考えられる.