低温ショックによるウメ果実の低温障害抑制効果と膜透過性及び膜脂質構成脂肪酸の変化との関係
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概要
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ウメ果実は一般に, 0〜1°Cよりも5〜8°Cの中間温度で低温障害が発生しやすいが, 収穫直後に‘低温ショック’を与えた後に冷蔵すると障害の発生が軽減できる.本研究では, この低温障害抑制効果を主として膜透過性と膜脂質構成脂肪酸の変化より調査した.1. 膜透過性の指標として, 種々の温度の水中に浸漬した組織切片からのK+イオン漏出速度を測定したところ, 低温障害感受性の小さいジャガイモでは, 温度の低下とともに漏出速度が減少したが, 感受性の大きいキュウリでは低温域での減少がなく, またウメ(‘白加賀’)では, 障害の出やすい中間温度で増大する現象がみられた.ウメ果実‘養青’,‘南高’,‘玉英’,‘古城’を用いて, 収穫当日のK+漏出速度と温度の関係, 並びに貯蔵中の低温障害発生状況を調べたところ, K+イオン漏出速度に異常が現れる温度と低温障害の発生が顕著な温度とはほぼ一致した.2. 低温障害の起きやすい‘鶯宿’に冷水2時間浸漬の低温ショック処理を行った後, 6°Cに貯蔵したところ障害発生が無処理果より抑えられた. 無処理果では, 貯蔵に伴いK+漏出速度が増大したのに対して, 処理果では初期に一時増加したが, その後ほぼ一定の低いレベルを保った. 果実生体膜脂質の脂肪酸組成を測定したところ, C16:0 を最も多く含み, ついでC18:2, C18:3, C18:1,C16:1, C14:0, C18:0 の順となった. 不飽和脂肪酸の割合は約52%で低いレベルであった. 低温ショック処理果では, 貯蔵に伴い不飽和脂肪酸の割合が増加した.総フェノール含量は6°C貯蔵に伴い処理果, 無処理果とも漸増したが, 処理果でわずかに低い傾向があった.ポリフェノールオキシダーゼ, ペルオキシダーゼ活性は貯蔵中に増大したが, 低温ショック効果との関係はみられなかった. 脂肪酸の不飽和化に関連する酵素活性の指標となるNADH-チトクロームC還元酵素活性は, 処理果, 無処理果とも6°C貯蔵中に増加したが, 処理果では処理中においても急増し, その後も無処理果より高いレベルを保った.3. 以上の結果より, 低温ショックによるウメ果実の低温障害抑制は, K+ 漏出速度などにみられる膜の透過性の変化の軽減と, 生体膜脂質構成脂肪酸の不飽和化の促進によるものと推察された.
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