二十世紀梨の柚肌病に関する研究(第1報) : 葉及び果実の滲透圧と柚肌発生について
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概要
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1952〜1954年鳥取に於いて,二十世紀梨果実の柚肌病発生に関係して,葉及び果実の滲透圧の季節的並びに日変化,土壤水分との関係,発生時期及び砧木の問題について実験を行つた。その結果の要約は次の如くである。 1.滲透圧の季節的変化について,成葉では5月と7月に高く(約16〜17気圧), 6月には低い(約14気圧)。5〜6月の若葉は成葉より2気圧程度低い。果実は5月より7月中旬まで大差がなく(10〜11気圧), 7月下旬より次第に高くなり,収穫期では約13.5気圧を示した。水分含量は葉に於いては, 5月から9月の間に約10%の漸減があり,果実では10%程度の漸増がみられた。 2.葉と果実の滲透圧の差は7月に最も大で, 6気圧前後に及ぶ。8月には果実の滲透圧が高くなる結果,その差は次第に少くなる。 3.夏期高温乾燥時に滲透圧の日変化を見た結果は,午前5時に最低を示し以後次第に上昇し,午後2時に最高となり以後夜間にかけて低くなる。日中の上昇は4〜7気圧にも及び,乾燥による水分不足時にはそれが著しい。 4.柚肌発生樹の日変化は,日中の最高時には正常樹と大差がないが,夕方から夜間の低下の度合が正常樹より遅い。従つて葉と果実との滲透圧の差の大なる時間が長い。 5.土壤水分不足と滲透圧の関係を見た結果,葉の滲透圧は圃場容水量附近より次第に上昇して初期萎凋点に至り,その上昇は5〜6気圧に及ぶ。その際,葉の水分含量は約10%の減少を示した。 果実に於いては葉より遅く圃場容水量と初期萎凋点の中程から上昇し,葉と果実の滲透圧の差が約5気圧程度になつた時に上昇の変化が認められる。そして初期萎凋点では2〜2.5気圧程度の上昇を示した。その際,果実の水分は僅かであるが漸減の傾向を認めた。 6.時期別に結果樹を水分不足の状態においた場合, 7月上旬乾燥区が著しい柚肌の発現をみた。その際,外観的に柚肌発生を認めた時期は,処理後20〜25日の8月中下旬であつた。 実際の柚肌発生樹について調査の結果は,大部分の果実が8月中に柚肌を発現した。 7.満州マメナシの葉の滲透圧は,等しい環境下では,日本ヤマナシ及び二十世紀梨より常に高い。 8.満州マメナシ砧二十世紀と日本ヤマナシ砧二十世紀について,葉の滲透圧を測定した結果,水分が比較的多く葉面蒸散の少い時には,両者の間に差がなく,夏期日中の葉面蒸散の盛んな時に於いては,日本ヤマナシ砧二十世紀が満州マメナシ砧二十世紀より著しく高い滲透圧を示した。即ち,満州マメナシ砧木の水分吸収が勝るものと思われる。
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