西日本, 特に北九州市の都市公害と都市の地域構造
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概要
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以上のように西日本においては, 大気汚染と水質汚濁が主な公害となっている。しかもこれらの現象は工業地域と港湾地域及び都市地域が主で, ここにはそれぞれの特色が認められる。これを北九州にその例をとってみれば, およそ以下の通りである。1 大気汚染 北九州においてはいおう酸化物と降下ばいじんに大きな特色が現われているが, 浮遊ばいじんやその他の物質には別に特色はない。それらの濃度分布を地域的にみれば何れもほぼ共通して分布のかたよりが現われている。すなわち, 洞海湾を取りまく北部に湾曲してラッパ状に拡がる響灘沿岸は, いおう酸化物の排出量の多い化学, 鉄鋼, 火力 (電力) などの立地する地域であり, ここに主としてこれら大気汚染が凝集している。しかしところによっては, 局部的な集中現象が現われ (八幡区の城山, 戸畑区の沖台), 社会問題をひき起こしている. これは前記の工場から排出された物質が市域内に広く拡散し, 風向と地形によってこのように現われているものである。またこのような大気汚染は, 何れも環境基準や生活項目基準を上廻ることはなく, その量は年々減少している。北九州市の大気汚染の種類や性格, 及びその分布の形態は全国の他の諸地域とはいずれも異なり, 当地域の特色の1つになっている。2 水質汚濁 主として河川と海水域によく見受けられるが, 当市域においては, 後者に大ぎな特色がある。それは洞海湾の海水の汚濁と底質のヘドロである。この海水域は, ヒ素・有機リン・総合水銀などの多量な有害物質が含まれており, そのために全水域とも, 環境基準項目 (pH, COD, DO) ではいずれも基準値を越えているが, 湾奥部においては特に不適合である。底質のヘドロはその厚さが約3mにも達し, 有害物質のカドミウム・ヒ素・シアン・鉛, などを多量に含んでいる。湾奥部から中央部及びその南部 (特に八幡区側) にかけては, 特にその含有量が多い。その主な原因は, 船舶からの油の流出や工場排水及び都市排水 (し尿・ふん尿などを含む都市下水)・河川水の流入・荷役中の荷こぼれなどによるものである。その他の, 周防灘や響灘, 港湾泊地 (関・北九州港) などでは別に問題にはならない。3 公害と地域との関係 公害は終局的には地域住民の健康への影響という形で現われてくる。北九州市においては, 市民 (小・中学生) のゼンソク態疾患の罹患者数によく反映している。他方, 公害と地域住民とのかかわりあいは苦情・陳情ともなって現われている。当市では, これら件数が年々増大しているにも抱らず市当局の指導, 防止対策によって多くの解決をみている。しかし今日では, 多くの公害は産業公害から, 都市公害へと, 次第に移行変質しているようである。
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